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「俺って独占欲強い、のかな」







独り言のように呟かれた言葉が届いて、優太くんを見ると
心配そうに私を覗く目と視線が合う。








『…そんなことない、と思うよ?』





「俺以外のやつがAのこと触ったらヤダって思っちゃうんだけど」









嬉しさがこみ上げてきて



それは一瞬にして崩れ去る。








私だって、優太くんを誰にも触れてほしくない




だけど、









『優太くんは、自分のこと簡単に触らせてるじゃん』





「え?」









思ったよりも低く小さく、声が発せられたのを自分でも驚く。



やっぱり一度持ってしまった感情は消すことはできなくて
鮮明に思い浮かぶ記憶が、脳内に埋め尽くされる。



目を見開く優太くんがだんだんとぼやけていった。









「…えっ、泣いてる?A、」





『私だって嫌なのにっ……あんなの…、見たくなかったっ……』





「A、どうしたの?…あんなのって…?」








それは気付かないふり?

覚えていないふり?




私の涙を拭う優太くんの手を静かにほどく。









『運転手さん、降ります』








私の言葉に慌てた優太くんは、待ってください、と運転手さんに言う。









「A、ごめん。俺、ちゃんと言ってくんないとわかんない」








そうだ。

優太くんが気付かないふりなんて、覚えてないふりなんて
そんなことするはずないのに。



なんであんなに仲良さそうにしてたのって
なんであんなに触れさせるのって
なんであんなに距離を縮めたのって


そう、聞けばいいだけなのに。









『………家…帰りたい…っ…』









勇気がない意気地なしの私は、ひとつも口に出せないまま。




シンとした車内に優太くんの溜息がひとつ。



それがますます涙腺を刺激して

溢れる涙が何度も頬を伝う。





少しの沈黙の後、優太くんは言い慣れた私の住所を運転手さんに伝えると、何も言わずに私の手をずっと握っていた。









家の前に着いてすぐ、財布を出す手が優太くんに拒まれたのを無視して、運転手さんにお金を渡すと、タクシーから降りた。









「Aっ、また連絡するからっ」









優太くんの言葉に何も返せずに、後ろを向いた。

走り出したタクシーの音が聞こえなくなったのを確認して振り返ると、当たり前に優太くんはいない。





最後に見た優太くんの泣きそうな顔が脳裏にこびりついていた。


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設定タグ:岸優太 , 永瀬廉 , King&Prince   
作品ジャンル:恋愛
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hinata(プロフ) - すかいさん» お読みいただきありがとうございます!岸くんのお世話係ですのほうでもコメントくださって、とても感激しております…! 更新は停滞しておりますが、他作品でも機会があればよろしくお願いいたします! (2020年3月14日 11時) (レス) id: ef05115d0f (このIDを非表示/違反報告)
すかい - コメント失礼します!とても素敵な作品で、読んでいた幸せな気持ちになりました。ありがとうございました^ - ^ (2020年3月14日 2時) (レス) id: c9cd880fe4 (このIDを非表示/違反報告)
hinata(プロフ) - ぷーちゃんさん» はじめまして!うわぁありがとうございますっ!!読んでいただいてる人が情景を浮かべられるように書くのを心がけていたので、そう言っていただけると嬉しいです(T^T)最後までありがとうございました!! (2019年8月25日 2時) (レス) id: 3e3d9afca9 (このIDを非表示/違反報告)
ぷーちゃん(プロフ) - 初めまして、岸くんも廉くんもかっこよすぎて平野担なのに恋しそうでした‥笑 とても読みやすく背景が想像出来るような内容でとても楽しかったです!! (2019年8月21日 18時) (レス) id: f5805a4cc2 (このIDを非表示/違反報告)
hinata(プロフ) - ゆかさん» ありがとうございます(T^T) 私の作品が好きだと言っていただけることが何より嬉しいです!!新作ができた時には、またぜひよろしくお願いします!! (2019年8月11日 0時) (レス) id: e06037eac2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:hinata | 作成日時:2019年4月22日 17時

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