【まふまふ】タイムリミットまで【歌い手】

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気分をあげるためにお気に入りの服を着て、髪もちゃんと巻いて。


未だなれないドアを開けて、足を前に進める。



「おはようございます！」

「おはようございます〜」



朝から元気な挨拶が行き交う、レコーディングスタジオ。


「今日も元気でなによりです、雨さん」


「あはは、ありがとうございます！」



元気に見えてるならいい。大丈夫。


「おはよう、雨」


「おはよう、るす」



珍しく一足先についていた輝。


手には彼が好きであろう珈琲の缶がゆらゆらと揺れている。



「どっちからにする？」


「んー、雨からで！」


「わかった〜」



気だるげにふぁいとー、と呟く輝はとても彼らしくて、その言葉でするすると緊張が溶けていく。やっぱり輝は魔法使いだ。



スタッフさんに私から録音を始める旨を伝えて、マイクがある部屋へと足を進める。



そこに掛けてあったヘッドホンを自分の耳へと当てると、ぶわり、とまた更に気分が上がるのがわかった。



最期のＣＤのための歌。


曲選もバッチリだ。



精一杯歌おう。


私の歌が1人でも多く届くように。




私が生きたという爪痕が誰かの中に残るように。





そうして、私は大きく息を吸った。

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