【まふまふ】タイムリミットまで【歌い手】

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「まだ歌ってなかったんー？俺待たんくてもよかったのに」


「うん」



元気よくバタン、とドアを閉め曲を入れるタブレットを手に取った姿に、胸が締め付けられた。



「えーじゃあ俺先に歌お！練習したい曲あるんやけどちょいアドバイス頂戴！」


「ごめん、先に話させてくれないかな」



声を遮って、今日の目的を果たすために口を開いた。


「ん？改まってどしたん？結婚でもするの？」


おちゃらけて笑うさと。嗚呼、ごめんなさい。



「違うの……あのね、私あと余命が2ヶ月とちょっとなの」



「はぁ？嘘やろ流石に。俺は信じんよ？」



ケラケラと笑って……



本当に信じてないのだろう、タブレットに目線を戻して曲名を入力していた。



「そーゆうと思ったぁ」



ゆうと思った。ほらね。



「でもな、嘘やないんよ」



目の奥がツーンとして視界がぼやける。


それでも、さとから視線は離さなかった。


離したら負けだと思った。




「嘘、やろ？なんで、なんで泣きそうなん」



「さと」




右からさとを宥めるような声が聞こえた。



「はぁ？意味わかんねぇ」


「さと！」


「2人して冗談キツいんだって。いつもみたいに早くネタばらしして」



瞳が潤んでいる輝が、バックから私の診断書の入ったファイルを取り出してさとにつきつけた。



「ちゃんと、見てあげて。姉ちゃんのこと、ちゃんと」


「なん、これ。え？」


「ごめん、ほんとにごめん」



とめどなく溢れる涙。


さとは診断書を読むほどに、瞳が潤んでいた。


ああ、ごめんね、ごめん。

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