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「ねえ健ちゃん」
「どうした!そんな暗い顔して」
「推しがいるんだって」
「は?」
「Aちゃん」
「え、Aちゃん?何事?」
「なんか聞いてない?」
「え、推しがいるって?え、そんなの紫耀しかいないじゃん」
「え、俺?!」
「逆に誰がいんの?Aちゃんの口から推しとか聞いたことないんだけど」
「でしょ?だからじゃん。俺なんかのこと推さないっしょ」
「いやいや、なんでそんな自信ないの?」
自信なんかあるわけないじゃん。
こんなの久々すぎて、ていうか経験なさすぎて、何が何だかもうよく分かんない。
だからわざわざ健ちゃんのお店に顔を出して、新しいネックレスでも見ようかな、なんて口実でレジ横で接客する健ちゃん取っ捕まえて今ちょうど独占時間、ってわけ。
2日前に会ったっきり、連絡は返していない。
返す言葉が見つからないというかなんというか。
頭の中は、推し、推し、推し、、だれ、、推しって誰、、
Aちゃん誰か好きな人いるの?
、、まさか俺?いやいやいや、そんなわけあるかい。
でも推しって推しだもんね。好きな人とは限らないもんね。でも推すってことは好きってことだよな。
っていう、永遠ループ。
そんなことばっか考えていたらまた夜眠れなくなった。
「はぁ、、もうよく分かんねえなぁ」
「ライブのあと連絡したの?」
「した」
「は?俺には返信ねえくせに?!」
「あ、写真は保存した」
健ちゃんに返していなかったわ、そういえば。笑
呆れながら俺の理解者は優しく微笑む。
「……はぁ、、、。……で、あれか。推しがいるって言われたんだ?」
「いや一昨日ばったり会ってさ」
「え、そうなの?やば!急展開」
「でしょ。俺もびっくり。海人と一緒にいたんだけど、なんかあの2人地元一緒で盛り上がっちゃって仲良くなっちゃってさ、バイバイした後に海人には惚れないでねって連絡したら推しがいるので惚れませんって返ってきたんよ」
「え、まってまって。情報量多すぎ!」
「あぁ、ごめんごめん」
「え、てかさ、知らない間にめちゃくちゃ仲良しじゃん!」
「そう?え、そう思う?だよね?」
所々端折りながら早口で近況報告。
冷静な判断をしてくれるであろう健ちゃんにはなんでもかんでも話しちゃうんだよなぁ、不思議なことに。
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作者名:詠夢 | 作成日時:2023年7月2日 20時