暑い氷/syao ページ4
晴天も晴天、熱中症も一歩先である
窓から入る日差しで、火傷をしそうな
そんな天気の、とある夏の日のお話
…
「しゃおくん、いい加減勉強を教えて」
「Aちゃんも勉強ばっかやってたら疲れんで？たまには野球でもして」
「人数が足りない」
むうう、と子供のように�茲が膨れ上がったしゃおくんの腕を掴み、机横の椅子に戻す
年齢は幾つだったか、学生の私と確か5、6歳、もしくはそれより上の彼は
口を開けば小学生の様な下ネタ、もしくはゲーム、野球をしよう、と誘ってくる
彼は母の妹の友人だとかなんとかで、バイト代わりに家庭教師をやっている
言うならば私とは真反対に、誰とでも仲良く出来て、好奇心旺盛で、元気で
仕事である勉強以外で何故、私に構ってくるのかは一切わからないけど
「な、やろうや！」
何かに似てると思ったら、犬だ、これ
「ゲームでもいいで？」
「変わらないよ」
「そんなことはいいから、ねえ、しゃおせんせー」
「ん！？」
教科書を開き、少しふざけて先生、なんていってみればこれだ
初対面で、「シャオロン、とかシャオくん、って呼んでな！」と妙に敬称を避け
私の呼び方を固定したのには、まあこんな意味があったわけで
彼は大きく驚いた後、少し咳き込んで、此方を酷く疲れた目で見る
「Aちゃんさぁ、僕これでも家庭教師なんだけど」
「うん」
「なんか、……先生はやめよう、シャオくんでいいから」
「先生には違いないよ、だから早く、せーんせ」
ぱしぱしと机の上に乗ったいくつかの教科書を、�茲を膨らませて叩けば、
恥ずかしくなったのか�茲を赤らめながら、彼はこほん、と小さく咳払いをする
そんな小・中学生や私よりずっと子供のような仕草をする彼は
どれどれ、と私の教科書を見ては、涼しい顔ですらすらと問題を解き、答えをいう
普段は遊びしか頭に無くても、頭はいいのだ、彼は
「しゃおくん、大学行ってたんだよね」
「あぁ、一応な？そんな頭良いとこちゃうかったけど」
彼の"頭の良い"が誰を指すのかは、なあんと無くわかった、分かってしまった
あえて知らないフリをして頭から消すが、それはきっと私にとって不愉快な存在で
この暑苦しい夏に、わざわざ顔を赤くして怒る必要もあるまいと、言い訳をした
そうやって、自分を押さえつけた方が、楽である
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