【歌い手】FANCY:YOU!!【めいちゃん】

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『夜半にお訪ねしてごめんなさい。私、隣に住んでいる柊と申します。』

恐る恐る押したドアホンに映っていたのは、めちゃくちゃ可愛い女の子だった。

画質の荒いモニター越しでもわかるビジュの良さ。なんというかこう、外見も勿論だけど内面から溢れ出る色気がもうたまらん。

『じゃあ、おやすみなさい。』

仕事柄というのもあるけど元々いた地元友達とか、歌い手界隈の友だちの知り合いとか、そういう横のつながりでしか最近は人と関われなくなってしまった。その上女の子となると尚のこと慎重になってくる。

そんな俺が今、お隣さんの女の子にナイトコールを頂戴しようものなら…どうなるか分かる？


｢マジで好き。｣
｢いやキッショいて。｣
｢付き合いたいすもん、普通に。｣
｢付き合いたい！？｣

こうなる。

｢いや流石に冗談ですけどね？｣
｢ああそうやんな？よかったー肉チョモ存続の危機やったもん今。｣
｢…。｣
｢…いや惚れてもうてるやんけ！｣

高い声で笑うGeroさんに釣られて笑う。

いやいいなと思ったのはそうなんだけど、狙ってるとかそんなんじゃないから！あー可愛いな、疲れとれたなーっていう、そんな感じの軽いヤツだから。


｢おはようございます。｣

運命かと思うって。
昨日の緩い雰囲気と打って変わっていかにもデキるOLオーラのお隣さん。
もちろんすっぴんも綺麗だったけどメイクも手伝って更に洗練された印象を受ける。俺も撮影前はメイクをしてもらったりするけどとんでもなく時間かかるし、そもそもメイクさんにしてもらうし…。朝早くからこんなキレーに自分で仕上げるなんて女の人って大変だな。

｢そちらこそ…仕事じゃ、ないですよね…？｣
｢あー、買い出しです。みんな潰れちゃったんで。｣
この人には絶対ニートって思われたくないから節々に仕事してますアピールも欠かさない。

｢今からですか！？じゃあ…、｣
｢オールです。寝てません。｣
｢めっちゃ元気じゃないですか！｣

あっちへこっちへいく話題にもかまわず付き合ってくれるお隣さん。このエントランスで別れたらもう彼女との縁がなくなってしまう――それはどうしても、嫌だった。


｢柊A、です。こちらこそよろしくね。｣

一生分の勇気使った。誰か俺を褒めて欲しい。

｢……柊さん、かあ。｣

また、会えるだろうか。

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