【歌い手】FANCY:YOU!!【めいちゃん】

■19 ページ24

最近日課になりつつあるエゴサーチ。

｢あーやば、嬉しい…。｣
お守りだ、これは。

まさか自分の楽曲をベースアレンジして頂けるとは。何度も聞いたはずなのに、たった2分足らずの合間に何度も心を揺り動かされる。ライブ前に見つけられてよかった。


明日に控えているのは、今までの『歌い手としてのめいちゃん』の集大成である初武道館ライブ。会場が近いので前日入りはせず、自宅から直接向かうことになっている。衣装や荷物も全部アッチに運び入れてあるのでパッキングの必要もない。

緊張しているか？と聞かれれば迷いなく是である。


『明日の参戦服です！』
『武道館立ってる姿想像してもうないてる』
『久々のちゃめぷんだ〜』

なんの取り柄もない俺を、それでも選んで応援してくれるめいふぁみに報いたい。ここに立てたよ、皆と一緒に来たんだよって。だからこそ、心配させてしまうようなステージにするわけにはいかないのだ。


｢…A、起きてるかな。｣
送信する内容を入力しては消し、入力しては消しの繰り返し。このままでは一生推敲して送れない気がしたから、もうどうにでもなれ！という気持ちのまんま電話をかけてみる。

ワンコール。ツーコール。

『もしもし？』
｢あ…もしもし！いま平気？｣
『全然へいき！どしたの、珍しいね。』
後ろでガヤガヤと人の声がする。恐らく平気ではないだろうに電話に出てくれる彼女の優しさに、今日はありがたく甘えることにした。

｢あ、あのさー！｣
『うん？』
｢明日、仕事のヤマというか大山というか、｣

俺の職種を伝えていないだけに言葉選びが難しい。

｢…とにかく、俺にとってめっちゃ大事な日でさあ。｣
『……緊張してる？』
｢そーりゃもう！…だから、応援してほしいなって。｣

話し始めてから、せめて話す内容くらい纏めておけばよかったと後悔する。


『アハハ、そっかそっか。』
『頑張れ、って月並みだけど応援してる！いつものめいちゃんで行ってこい！』

鼻の奥がツンと痛む。いつもの声色。いつもの口調。いつもの、A。飾らないそれにたまらなく救われた気持ちになった。

｢ありがと！じゃあ、もう寝るね。おやすみ！｣
『いーえ！おやすみ！』


ああ、この人のこういうところを好きになったんだな、俺は。

□20→←@_000 さんがツイートしました

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す