【歌い手】FANCY:YOU!!【めいちゃん】

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ざっくり映画の内容を説明すると、挫折したピアニストの主人公と、突如主人公の前に現れた転校生であるヒロイン。すれ違うふたり、そしてヒロインから告白される衝撃の事実――、という、こういった映画ではありがちなめちゃくちゃ王道ラブストーリー。


｢めﾞぢゃぐちゃよﾞがっだでずねﾞ…。｣
｢あﾞいﾞ…。｣
2人してズビズビ泣いた。めいちゃんに至っては割と序盤から泣いてた。

｢エンディング流れるタイミングやばくなかったすか？｣
｢いやもうあれは泣かしに来てますよ。｣
｢ですよね？｣
｢結局結ばれなかったし…。｣
そう。紆余曲折を経て、様々な困難を乗り越え、それでも結ばれなかったのだ。もうそのリアリティ溢れる演出に余計感情移入しちゃって…続きは是非、劇場で見て頂きたい。

チラリとスマホの時計を見ると、時刻はまだ17時前。

｢ご飯までまだ若干時間ありますね。｣
｢あ、ホント？じゃあちょっとCDショップ寄りたいんですけど…。｣

めいちゃんが指さした先には同じ館に併設されているCDショップ。私としても流行りの曲をリサーチしたいところだったのでありがたくご一緒させて頂くことにした。
音楽好きなのかな？



ずっと後をついて行くのもなあ、と思ったので、私は私で興味のあるコーナーをぶらついてみる。
そこで一際目を引くビビットなアルバムと目が合った。


｢…『大迷惑』？｣

およそ自分のアルバムに付けることはないであろう独特なワードに興味が湧く。ここは視聴ができるショップらしいので、品出しをしている店員さんを呼び止め、試聴盤にセットしてみる。



『―眩む様な眼差しが身を刺した ｢愛して恋して堪らないの｣』



再生してからサビまでずっと、歌声の迫力に圧倒される。
クセがなく万人受けする声はロングトーンで潰れることも無く、気持ちがいいくらい伸びやかでストンと心に落ちていく。
間違いなく唯一無二であるこの人の声を、曲を、ベースで弾いてみたいと――それくらい衝撃的だった。


｢あれ、なんか買ったんすか？｣

気がつけばレジで会計を済ませていて、後ろに並んだめいちゃんが声をかけてくる。なんだ、ちゃっかり買ってるじゃん。

｢うん、ちょっとね。｣
｢何買ったの〜！｣
｢恥ずかしいから内緒ですー！｣

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