思惑/utu ページ18
ピョロロ、頼りない音が廊下に響く
音の先には、仲良く手をつなぐ1組の男女
男の方は、どうも見覚えがある
じとりと視線を注げば、なんとまあ私の恋人ではないか
ピョロロ、ふきもどしを鳴らして回れ右
やつの浮気性は重々承知しているし、その上で関係を持っている
馬鹿だよなあ、うん、馬鹿だ
小気味いい革靴の音が近づいてくる
ぱ、と肩を掴まれ、無理やり目線を合わせられる
｢A、見てた？｣
｢...｣
yesの代わりにピョロ、と一鳴き
｢誤解やからな｣
知っている、あの子を見つめていた表情が、取引先に向ける表情と
同じだったことくらい
遠目から見たら繋いでいるように見えても、握りかえしていなかった
ことくらい
今に始まったことじゃない
外面がいい鬱が好意を持たれること
凄いヤツで何処ぞの姫君に求婚されていたことがあったな
｢いてっ｣
ふきもどしを伸ばしてぺちりと頬に当てる
鬱の後ろからは、痛いくらいの視線
ああ、嫌だ嫌だ この瞬間がとてつもなく嫌い
さっきまでピョロピョロ鳴らしていたそれを鬱にペイッ、と投げつけて
自室へと戻る
＊
｢A、入ってええ？｣
返事を聞く前に開く扉
私の意見を聞く気がないなら疑問符を付けるなよ
私はというと、クローゼットの中で可愛らしく拗ねている
1度腹を立てると面倒なほうだと自負しているよ
ずかずかと迷いなく開け放たれたクローゼット
こういうとこ、こういうとこだ
普段恋仲だという素振りすら見せないくせに、いざとなったら
見つけてくれる
そういうとこが、大好きで大嫌い
｢怒ってる？｣
｢煩い、お前なんかあの美人と愛の逃避行でもしちゃえばいいんだ｣
｢ごめんって...｣
対して私は？
何もかも中途半端、性格は最悪
彼が無能だ何だと罵られるたび、黒い何かが湧き上がる
｢お前は、私なんかでいいのか｣
お前の隣は、もっと適役がいるのではないか
そう続けようとした できなかった
どうやら地雷を踏み抜いていた様子
怖い顔して怒れるかなあ
｢お前じゃないと、駄目やねん｣
相反して、悲しそうにそ、と呟く
そして俺やってそんなできた人間じゃねーしな、浮気グセ直らんし
陽気な表情と声で言い放つ
結局のところ、許されてしまうし、許してしまうのだ
最後の最後には戻ってきてくれる、わかっているから
妙な距離感、近いようで遠いこれが、今は心地いい
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 53人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちぃ汰。(プロフ) - 哀さん» こちら側へようこそﾋﾟﾎｯ(効果音) 全然大丈夫ですよ！ フォロバしたいのでリプライくださると嬉しいです！ (2017年2月20日 22時) (
レス) id: fa38c1b869 (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - ちぃ汰。さん» 憧れだなんてめちゃめちゃ嬉しいです(宇宙船に吸い込まれる音) フォローしても大丈夫ですかね...？ (2017年2月20日 21時) (レス) id: 80ff6831b5 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 哀さん» 私も憧れの方に憧れとか言われてもうピポ化してます やってますやってます！ (2017年2月20日 17時) (レス) id: fa38c1b869 (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - ちぃ汰。さん» あこがれのお方にリクエスト頂けてめっちゃﾋｭｯってなってますマジです ちぃ汰さんって青い鳥やってます？ (2017年2月20日 8時) (レス) id: 80ff6831b5 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 哀さん» ま、マジすか(震え声) ホントに語りあいたいものです(眼孔ガン開き) (2017年2月19日 21時) (レス) id: fa38c1b869 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：哀 | 作成日時：2016年11月28日 7時
