川西太一のバレー録 (ページ12)

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それからというもの引退も引き継ぎもあっという間に過ぎ、いつの間にやら先輩が全員いない練習というものに慣れ始めていた。

初めこそ推薦以外の先輩が減ったことにより体育館を広く感じていたが、適応力って高いんだなぁなどと、何気なく感じざるを得なかった。

この体育館の広さを、去年は感じなかった。

今年の3年が太一にとって如何に大きい存在であったかが計り知れた。

そんな時、太一に母親から1本の電話がかかってきた。

｢育史おじさんの所が春校に出場したらしくて、もしも見に来たいなら特別に自分の身内ということで関係者カードをあげるから見にこないかって｣
叔父は自分のプレーをテレビ等で見ていて、今年春校に出れずとも、来年また羽ばたけると確信しているようだった。

｢白鷲を来年羽ばたかせるのはお前だろう｣
叔父からのそのメッセージに太一は、直ぐに監督とコーチに春校期間、叔父の好意に甘え、春校を見てくると、練習を休むことを伝え、親に東京行きの新幹線の手配を頼み、春校へと備えた。

会場で叔父と落ち合うと、叔父は烏野のガラの悪そうなコーチと話をしていた。

｢おまっ、白鳥沢の！？｣
｢繋心はやはり知っておったか。こいつは甥っ子だ｣
叔父はそう言って太一の背中を強く叩く。

烏野のコーチは目をパチクリとさせ、それが何でここに、と絞り出したかのように聞いた。

｢こいつはワシの1番の教え子だからな。来年のために社会見学で来させた｣
｢来年も白鳥沢に勝って全国に来るのは烏野ですけどね！！！｣
太一を蚊帳の外に大人の闘いが目の前で繰り広げられる。

そして関係者パスを受け取り、太一は会場を歩き回る。

試合開始にはまだ時間がある。