仔犬なんて嘘

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只今の時刻、午後12時過ぎ。
横浜スタジアムに向かう為に哲人くんの車に乗り込んだ。

朝、条件を言ってから少し様子の違う哲人くん。
昨日はあんなに甘えたさんだったのが嘘だったみたいに。

車を運転する哲人くんの邪魔にならない程度に話しかけた。

『横浜スタジアムって広いの？』

山｢ん。｣

『神宮球場より？』

山｢さぁ。人によって捉え方がちゃうから。｣

『へぇ。』

山｢...｣

『て、哲人くんはどこで広さを見るの？』

山｢バッターボックスから見たスタンドまでの距離とか外野の距離｣

『そう、なんだ』

哲人くんのあからさまなオーラのおかげでなかなか会話が続かなかった。

こっちから話題を持ちかけないと口を開かないし、喋り出したと思ってもぶっきらぼうな返しばっかり。

私はもう諦めて窓の外を眺めることにした。

昨日と今日で哲人くんの車に乗るのは2回目。
けれど、まだ助手席には1度も座っていない。

まぁ、彼女でもないし当たり前なんだけど。

そういえば哲人くんにとっての私って一体なんなんだろう。

私の抱いた疑問は解けないまま球場に着いてしまった。

山｢着いてきて｣

『あ、うん』

スタスタと前を行ってしまう哲人くん。
何故かその背中を見つめるのが辛かった。

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