仔犬なんて嘘

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入口に案内されて少し離れた場所で待っているとぞろぞろと選手っぽい人達がやってきた。

少し見られている気がして私はあえて入口から顔を背け、下を向いた。

自分の靴しか見えていなかった視界にもう一人の靴が入り込んできた。

びっくりして顔をあげた。
そこには山田選手がいた。

山｢ほんまに来てくれたんや！｣

『...やっぱり帰ります』

山田選手を間近に見たら何故か来てしまった自分に恥ずかしくなって帰ろうとした。

するとあの時みたいに腕を掴まれた。

山｢ちょ、ストップ！もう暗いし送ってく！！｣

『け、結構です！』

山｢あかん！｣

『平気です！』

なんて会話を繰り返していると横から声が聞こえた。

｢おい、哲人。入口でイチャイチャすんなや。｣

あ、後輩が言ってた坂本選手だ...

山｢そんなんじゃないっすよ！｣

坂｢嘘やん。手なんか繋いじゃって。｣

山｢ほんまですし、繋いでなんかないっすよ！｣

坂｢なんでもええけど、女の子困らしたあかんで？
じゃ、俺帰るわな。お疲れ。｣

山｢お疲れ様です｣

嵐のように去っていった坂本選手。

私もこっそり帰ろうとしたが捕まってしまった。

山｢話したいことたくさんあるから送らして。な？お願いやから｣

なんて仔犬が餌を欲しがる時のような顔で見つめてくるもんだから私は断れずに『分かりました』と言ってしまった。

それが過ちだったなんてこの時の私が知る由もない。

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