ドミノ (ページ20)

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～中島卓也 side～

電話が繋がってAにしっかり謝ろうとしたら

「もしもし？卓ー？」

勇人さんの声だ。
いつもそうだ。
俺はAと話したいのに
最近は勇人さんがよく電話に出る。

『勇人さん、Aいるんですよね？
電話、Aと変わって下さい。』

坂「変わってどうすんねん」

明らかに勇人さんの声色が変わった。

『Aとちゃんと話したいんです。』

坂「はぁ？お前、いい加減にしろよ？
今更何言っとんねん。」

勇人さんがキレているのがわかった。
でも、俺とAの関係は正直勇人さんに関係ないことだと思う。
俺は思ったことをそのまま伝えた。

『...勇人さんには関係ないっすよね？』

坂「関係？あぁ、悪いけどあるやんわ。
俺、Aのこと好きやし。告ったし。ハグもキスもしたし。」

は？なにをしたって言った？
勇人さんはAのことが好き？
すぐに理解することなんて俺にはできんかった。

なんでそんなことしたんだという怒りが募った。

『勇人さん、何言ってるんすか？！
人の大切なものに手を出すとか、何考えてるんですか？！』

坂「その大切なもん傷付けたのお前やろ！」

そう言われた瞬間、俺は何も言えなくなった。

勇人さんは続けた。

坂「だいたい、知っとるん？泣きたくなるくらい辛い思いしてんのに卓のこと信じようとしててんで？

震えとるのに平気やって嘘までついて。

自分のことばっかになる前に大切なもん守れや！

俺は遠慮なんかせんからな。
見失っとると足元すくわれんで？」

その言葉を最後に電話は切れた。

そんなの知らなかった。

泣いてたなんて聞いてない。

辛い思いをさせてしまっているのは
分かっていたつもりだ。
でも、そんなに追い込んでいただなんて考えもしなかった。

俺が付き合ってるはずなのに、

俺が守らなきゃいけないはずなのに、

今は傷付けてばかりだ。

悔しいが、
勇人さんが言ってることは間違っていない。
今は俺よりも勇人さんの方がAのことを守れている気がする。

どうしてこうもうまくいかなくなってしまったんだろう...。

前を向くと心に誓ったはずなのに、

『もう...なんやねん...』

俺はその場に座り込んでただひたすら静かに泣いた。