【ツキウタ。】LOVE-SONGS【短編集】

たからもの。*水無月　涙* ページ8

『る、涙君、おまたせ……。』

うつむきがちにこちらへ歩み寄ってくる、A。

「別に。一応5分前だから。」

『ん……。涙君は…優しいね……。』

「べ、別に…///」

『じゃぁ…行こう？』

にこっ、とひかえめにほほ笑んでいる。

(可愛い……///)

顔をそむけながら、手を出す。

「行くよ。」

『うん………////』

遠慮がちにからめられた手を、しっかりと握った。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

『うわぁ……すごいですね………。』

キラキラした目で、展示物を見ている。
今、僕たちは美術館に来ている。

Aの、希望だ。

「…僕は、やっぱり、よく分かんない……。」

『ん……感性は…人それぞれだよ………。』

「そう。」

お互いに、口下手なきらいがあるので、会話は短い。
だが、それはあまり気にしていない。

そのあと、一時間ほどかけて、館内を一周した。

『今日は……付き合ってくれて…ありがと……。』

「何言ってんの。
　僕は、別に、ヒマだったし……。」

『やっぱり、涙君は……優しいね………。』

そう言って、またほほ笑んだ。

その時だった。


ポツン―――


『あ……雨………。』


ポツ、ポツ、ポツ――


「なんか、ひどくなりそう。」

『傘、無いな………。』

「え、そうなの？」

あ。


良いこと、思いついた。

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