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平凡少女の憂鬱*睦月 始* ページ35

それは、ボランティア活動の前日のことだったと思う。

私は、雑用を押し付けられたため、外は茜色に染まっていた。

そして、とある教室の前を通った時、見てしまった。

1人で、大量のプリントを閉じる我が校のキング、睦月始を。


(うっわ…手際良いけど…こんな時間だよね?)


パチッ、パチッと規則正しく鳴るホッチキスの音と、どんどん積み重なるボランティア活動の冊子。

これをスルーするほど、私の心は冷たくなかった。


『あ、あの……よかったら、手伝えることとか、ありますか…?』

「……。」


見事なまでのスルー。

めげずにもう一度。


『あのっ!手伝いましょうかっ!』

「んっ…あ、悪い。俺に言ってたのか?」


眠そうに振り向いた彼の手には、紙とホッチキス。


『はい。ていうか他に誰がいるんですか。』

「悪い…ぼーっとしてて気づかなかった。」


そういって決まり悪そうに頬を掻く姿は、至って普通の高校生に見えた。


『で…何かできることありますか?』

「あー……そこに積んであるやつ、各学年一クラス2人だから、学年ごとに分けてくれるか?」

『えっと……あ、はい。』


つまり、学年ごとで必要な部数をまとめておけということだろう。

私は、なんとか記憶を掘り起こして、クラス数を思い出しながら冊子を数える。


『…。』

「……。」


気まずい。

無言の空間に、ホッチキスの音と紙の擦れる音のみが響く。

2年生までをまとめて、残るは今睦月くんがやっている冊子の綴じる作業を待つだけだ。

何の気なしに外を見ると、藍色が茜色を覆い隠しかけていた。


「…よし。悪い。待たせたか?」

『あ、いえ…。』

「じゃあ…その、悪いんだが、各クラスに2部、入れるの手伝ってくれないか?」

『はい…。』


2人で集配ケース(各クラスに配布する手紙などがクラスごとにまとめてある)に行って、冊子を2部入れていく。

数分もしないうちに作業は終わった。


「カバン取ってくるから、下に居てくれないか?」

『えっ、良いですよ!』

「これぐらいさせてくれ。」


そう言って上に戻っていく睦月くん。


結局その日は、送ってもらった。

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柿逢@みうる。 - 陽くんの、ドキドキが止まりませんでした!余裕たっぷりな陽くんが素敵すぎますね…!!股ドンとかされてみたいですね(変態) そしてGenau!が好き(突然) (2015年7月23日 5時) (レス) id: 11a84e1911 (このIDを非表示/違反報告)
紫鶯 - あわぁああああ!!吐血して良いですか!?(ゲホッ)病み始マジイケメン!!勿論、春聖母(笑)ホントここに文才の神居るわ……(笑)ありがとうございます!また良ければリクエストさせて下さい(*´∇`*) (2014年8月4日 3時) (レス) id: 8f41f4df89 (このIDを非表示/違反報告)
なでっ子 - いえいえ<m(__)m>私も変な言い方してしまってすいませんでした。これからも応援させてください<m(__)m>続編楽しみに待ってます<m(__)m>^^ (2014年8月1日 15時) (レス) id: a39f8fa092 (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - なでっ子さん» すみません、それは単なるミスです…申し訳ありません! (2014年7月31日 16時) (レス) id: a2cd4c3dee (このIDを非表示/違反報告)
なでっ子 - あ、そうじゃなくって、二話では始なのに。一話では新なんです (2014年7月31日 14時) (レス) id: 00c2e06e02 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍華 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2013年6月24日 17時

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