出逢った頃のように３ (ページ16)

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｢あっ…はい！｣

この手を取りたい

だけど

取ったらもう引き返せない

．

．

立ち上がろうと地面に手をつくが、今なおガクガク震える足は言うことを聞かずに力無くうなだれている

すると、コンクリートにくっついていたあたしの両手を優しく取り、彼は｢んふふ｣と微笑んだ

．

．

大｢うわ…いたかったね？｣

あたしを立たせた後、しゃがみ込んでストッキングの破れた膝を見つめる

大｢血ぃでてんな…｣

顔をしかめて、まるで自分が痛むかのように呟く彼の姿に、ジンジンとした痛みが膝から胸へと上がっていく気がした

｢あの…今日はすみませんでした！｣

勢いよくお辞儀をすると、しゃがみ込んでいた彼に近づきすぎて慌てて元に戻る

大｢おわっ！｣

｢わっ！すみません！｣

大｢びびった…｣

｢ホントに…何から何まですみません！｣

大｢なんであやまんの？｣

｢だって…｣

大｢きてくれたじゃん｣

｢えっ…？｣

大｢ちゃんときてくれたじゃん？ね？｣

優しく微笑む彼がどんどん滲んでいって、目尻を下げた笑顔が、今度は困った顔に代わっていく

大｢えっ？Aちゃん？｣

｢ホントに…すみません…｣

．

悲しいんじゃない

ただ

こんなに大好きな彼からの誘いを

すっかり忘れていた自分に腹がたった

．

．

｢すみませんで…｣

何度目かわからない謝罪の言葉は、ギュッと強い温もりによって遮られ、左の頬には彼のチクチクした襟足が当たっている

｢大野…さん？｣

現状が理解できないまま立ち尽くしていると

小さな声で

この暗闇に吸い込まれそうな程の声で

彼はこう言った

．

．

．

大｢……すき。｣