出逢った頃のように【S.O/ars】 (ページ7)

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｢はぁ…出来た…｣

．

あれからひたすらＰＣと向き合って、ようやく出来た書類をまとめてから時計に目をやる

｢…２４時！？急がなきゃ終電に乗り遅れる！｣

適当にデスクを片付けてから、駅までの道程を走り抜ける

無事に間に合った終電に飛び乗ると、深夜にも関わらずキラキラと光る眠らない街・東京の景色がぼんやりと映り、一気に体の力が抜けた

｢頭イタ…｣

すっかり忘れていた頭痛がまた振り返し、なんだか今日は走りっぱなしだったなと溜め息を付きながら、しばらくして電車を降りた

．

．

駅からマンションまで、住宅街をトボトボと歩いていると、ポツリポツリと雨粒が頬に落ちてくる

｢うそっ…雨！？｣

小粒だった雨はあっという間に大粒になり、ザーザーと音を立てて降り注いだ

｢もう…｣

今日はホントについてない

また走るのか…

もう疲れたな…

あとは帰るだけだしこのまま歩いて帰っちゃおっかな？

なんて頭で考えても、自然と足速になるのだから、人の体とは良く出来だものだ

｢脳ってすごいなぁ…｣

？｢えっ？おわっ！｣

｢わっ！｣

雨粒が目に入るのを避けるように下を向きながら走っていたら、また誰かにぶつかったようだ

｢すみません！！｣

慌てて顔を上げると、

？｢またあんたか…｣

と呆れた声が返ってきた

｢もしかして…朝の？｣

？｢うん｣

｢わわ、ホントすみません！何度もぶつかってしまって…
あ、あと携帯拾ってくれた方ですよね？えっと…お名前は…大…あれ？えっと…｣

？｢大野です｣

｢あ、そうだ！大野さん！｣

？｢ねぇ、そんなことよりさ、冷たくないの？雨｣

｢えっ？あ、雨ね、冷たいです｣

？｢これあげる｣

｢えっ？カサ？｣

？｢おれもう家着いたから使わねぇし｣

｢えっでも…｣

？｢はい。じゃあ｣

｢ちょっ…大野さん！？｣

大野さんは、あたしにビニール傘を手渡すと、何も言わず、振り向くこともなく高級マンションへ消えて行った