37:運命 ページ37
_
「わたしは蓮みたいに、キラキラした経験をしてないから」
結婚してからは夫との思い出しかない。
昨日の蓮のように人を楽しませる話ができるか不安だった。
話すのを渋っても、蓮は優しい瞳でわたしを見つめる。
「難しい話はしなくていいよ。
Aはどんな子どもだったの？」
「……うーん、」
精一杯思い出す。
さっくんと出会う前の、わたしのこと。
「小さい頃はけっこう活発だったかな。家の中にいるよりも外で遊ぶことが好きで…そういえば怪我ばっかりしてた」
「そうなんだ」
「高いところから飛び降りて足を挫いたり。
子どもの時は虫やカエルも平気だったなあ」
幼少期の話から、小学生の頃に流行った遊び、中学生の頃によく聴いた曲、高校生の頃はどれだけ可愛く制服を着こなすか悩んだこと…
忘れていたと思っても、意外と覚えていて。
うんうん、と頷きながら聞いてくれる蓮のおかげで
気付けばペラペラと自分自身のことを話していた。
「……こんな話しても、つまらなくない？」
「全然！めちゃくちゃ楽しいし、嬉しい。
Aの今までを共有できてる気がする」
「そう…かな。ありがとう、でもここまでにする」
「え…なんで？」
……もうここからは、夫との思い出ばかりで話せない。
「わたしの話はいいの、蓮のことももっと話して」
そう言ったけれど、蓮は頬杖をついて
見透かしたみたいにわたしの顔を覗き込んだ。
「分かってるよ、その頃に佐久間さんと付き合ったんでしょ」
「え……知ってるの？」
「知ってるっつーか、知らされた？」
ふは、と目を細めて蓮が笑う。
「何年に出会ったとか、何月に付き合い始めたとか、日本史の年号みたいにめちゃくちゃ細かく教えてもらったし」
「そうだったんだ…」
「正直佐久間さんが羨ましかった。
そんなにひとりの人を深く愛せるなんて、俺は経験なかったから」
「まあ今は俺の方が勝ってるんじゃね？って思ってるけど！」と明るく言い放った彼は、本当に全部知っているのだろうか。
ーさっくんがどれほどの執念で運命を変えたのかを。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1125人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藤野(プロフ) - まままさん» まままさま、こちらも読んでくださっていたなんて嬉しいです！♡これからは「惚れるな危険」も更新していきますので、どうぞよろしくお願いします〜！ (2022年4月4日 9時) (
レス) id: 598697b442 (このIDを非表示/違反報告)
藤野(プロフ) - chipmxxxさん» chipmxxxさま、うれしいお言葉ありがとうございます…（ ; ; ）♡黄さんの略奪愛、構想が溢れてきます…！笑 ぜひそのうち書きたいです♡ (2022年4月4日 9時) (レス) id: 598697b442 (このIDを非表示/違反報告)
ままま(プロフ) - 完結おめでとうごぞいます！！大好きなお話でした💗惚れるな危険も楽しみにしていますね！ (2022年4月3日 20時) (レス) @page43 id: fad7eeb188 (このIDを非表示/違反報告)
chipmxxx(プロフ) - 最高の作品でした！こういうお話大好きです(笑)良かったらめめとひーくんで、めめの彼女にひーくんが一目惚れしてどうにか略奪出来ないかって頑張るお話読んでみたいです！！！ (2022年4月3日 11時) (レス) @page43 id: 1d97c6ec44 (このIDを非表示/違反報告)
藤野(プロフ) - なかさん» なかさま初めまして！ありがとうございます…（ ; ; ）想像できるようにうまく書けているのか不安だったので、そう言っていただけて嬉しいです…！とっても励みになります（ ; ; ）完結までどうぞよろしくお願いします！ (2021年10月23日 9時) (レス) id: 598697b442 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藤野
| 作成日時：2021年10月4日 2時
