束縛しないで-後編-《青》

another story ページ27

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「最近、1ヶ月に一回は会ってくれるよね」




行為のあと、気怠い身体を起こして下着に脚を通していると絡みついてくる女。




…なんか勘違いしてんなあ。





眼鏡を玄関のシューズボックスに置いたせいで、なにも見えない。



手探りで自分の服をかき集め、腰に回された女の腕を振りほどいて衣服を纏う。







「あー、もう来ないかも」


「え？」


「好きな人できたから」







女の顔が見えなくても茫然としているのが分かる。



Aの代わりにはならなかったけれど、我慢した分の欲を吐き出すのにはちょうど良かった。





「じゃあねえ」





ちょっと待って、と引き留めてくる女を無視して
シューズボックスの上の眼鏡を掴み玄関を出る。





好きな女に触れられないって、辛すぎる。




眼鏡をかけたのに星も見えない濁った夜空を見上げて、溜息を吐く。








もう少しでAを奪えたのに。

心まで欲しくなったのが良くなかった？






いざ俺の罠にかかったAを見たら気持ちが揺れ動いて、気付いたら自分で糸をほどき、獲物を逃していた。





「あんな顔されてたら、ねえ」





玄関で俺を出迎えたAは、目を赤くしていた。

泣いていたんだとすぐに分かった。






馬鹿な翔太が、馬鹿な女と会ったせいで。







本当にAを笑顔にできるのは、翔太だけ。

絶対勝てると思った賭けにも負けて、俺はあの時立ち去るしかなかった。






でも。






俺は「幸せになれよ」なんて絶対に言わない

こんなに笑わせたいと思ったのは、心が欲しいと思ったのは、Aが初めてだから。







「待っててね、Aちゃん」







人差し指で覚えたAの唇の感触を思い出しながら、俺は夜空の下を歩いた。






end


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