束縛しないで-後編-《青》

03. ページ3

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「なんで嫌いになってほしいの？」

訊ねると、言いにくそうに黙って俯いたA。



部屋着姿もかわいいなあー、と
上から下まで視線を動かす。



まだ寝てるとは思わなかったけど
この時間にきて正解だった


Aのシフトを局の知り合いに聞いて
絶対に家にいるであろう時間を選んだから。



まじまじと見ていると、ふと気づく



首元にいくつも見える薄っすら赤い痕。





「あーはいはい、そういうことね」


「…え」


「あいつキスマークつけすぎ、余裕ないなあ」


あの日、横にいる男を見る目ヤバかったもんなあ




彼女はハッとして、両手で首元を隠す。


翔太の独占欲を垣間見る。

そんなにこの子を盗られたくないのかよ。



「束縛されんの嫌だったもんねえ、Aちゃん。
だから翔太のこときらいになったんだ？」


「…い、じゃないです」


「ん？」


「嫌いじゃ、ないんですけど…」



襟元をかき寄せてキスマークを隠しながら、Aはぽつりぽつりと話した。



前の彼氏と別れて、
もうこんな付き合い方はしないと誓ったこと


翔太の言動に恐怖を覚えるときがあること


離れた方がいいと分かっているのに
嫌いになれないこと




「だから向こうが嫌いになってくれたらいいな、って」



…なるほどねえ

不器用同士の恋愛は大変だねえ



「んじゃあさ、取り引きしない？」





Aは蜘蛛の巣にかかった獲物のようだった。




逃げようとするほどに絡め取られて

ゆっくり俺に食われたらいい


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