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「ん、これ飲んで」
帰ってきた辰哉が渡してきたのは
小さな瓶に入った栄養ドリンク。
「いちばん二日酔いに効きそうなやつ選んだ」
「ありがと」
ベッドの上で身体をゆっくり起こして小瓶を受け取り、
ビニール袋をガサガサと漁る辰哉をボーッと眺める。
「あとはー、」と言いながら
次々とテーブルに並べられていくものたち。
水、スポーツドリンク、
それからインスタントのしじみ汁。
「水分いっぱい摂って」
「はい」
「味噌汁飲む？しじみ効くらしいよ」
「うん」
「じゃあお湯沸かすわ」
「うん…ねえたつ、」
キッチンへ行こうとした辰哉が
くるっと顔だけこちらに向ける。
「どうした？あ、水か」
慌ててテーブルの上のペットボトルを
ほら、と渡してくる辰哉にまた心臓を掴まれて。
決意が揺らがないように、必死に首を振る。
「え、違うの？」
「ううん、」
「そんなにヤバい？トイレ行く？」
「…そうじゃなくて」
「どうしたのよ」
「……もうこういうの、いい」
ズキズキと痛む頭。
本当は終わりになんかしたくない。
曖昧な関係をはっきりさせずに
ダラダラと甘い蜜だけ吸って過ごせたらどんなにいいか。
でももうそんなに若くないし。
叶わない恋に身を焦がすほどの余裕もないし。
セふれが恋人に発展するのも
奇跡のような話だって分かってる。
勇気を出して伝えた言葉は引き金になって、
次々と口から想いが溢れてくる。
「もうすぐ30だし」
「そろそろ遊んでる場合じゃないのに
たつがいるから何となく満足しちゃうし」
「たつが優しいせいで錯覚しちゃうし」
ペットボトルを手に握ったまま何も言わずに佇む彼を
こんなに憎たらしく思ったことはない。
「…なんか言ってよ」
「それってさ、」
「うん」
「…いや、うん、一旦全部聞く」
辰哉はペットボトルのキャップを開けてわたしに渡すと
「全部聞かせて」と、その場にすとん、と座った。
「そういうのがよくないの」
「うん」
「たつに優しくされたら
他の男の人がどうでもよく見えちゃうの」
「うん」
「だから優しくしないで」
「うん」
「二日酔いの薬なんて買わなくていいし」
「うん」
「お味噌汁なんて作んなくていい」
「うん」
「……帰って、」
「お前、なんで泣くのよ」
「………頭痛いの、だから、」
素直になれないのを
せめて二日酔いのせいにさせて。
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藤野(プロフ) - エリさん» エリさま、最後まで読んでいただきありがとうございます…！そして嬉しいお言葉、恐縮です（ ; ; ）♡次は白さんのお話を書きたいと思っておりますので、ぜひぜひ読んでいただければ嬉しいです♡これからもよろしくお願いいたします！ (9月9日 23時) (
レス) id: 598697b442 (このIDを非表示/違反報告)
エリ(プロフ) - おつかれさまでした！本当に、素敵すぎる作品でした♡きっとこれからも何回も読み返してしまうと思います。今回のラウちゃんが可愛かったので、年上のお姉さまに必死なラウちゃん見たいです…(/ω＼*)これからも応援してます♡ (9月2日 22時) (レス) @page48 id: 75cad7619e (このIDを非表示/違反報告)
藤野(プロフ) - ひなこさん» ひなこさまありがとうございます！なんと嬉しいお言葉…（ ; ; ）少しでもドキドキしていただけていたら幸いです…！次の作品も楽しんでいただけるように頑張ります！♡ (8月25日 23時) (レス) id: 598697b442 (このIDを非表示/違反報告)
ひなこ(プロフ) - 完結おめでとうございます！リアコふっかのかっこいい部分とふわふわな部分具合が丁度良くて、主人公もとても可愛かったです♡何気ない日常でのプロポーズも本当に素敵でした！次回の作品も楽しみにしてます♩ (8月24日 23時) (レス) @page48 id: 3d8e593499 (このIDを非表示/違反報告)
藤野(プロフ) - lncjさん» いつもコメント嬉しいです（ ; ; ）♡ありがとうございます！完結までお待たせしてしまったのに、最後まで読んでいただき本当に感謝です…。次の作品も、また読んでいただけたらとってもとっても嬉しいです（ ; ; ） (8月23日 13時) (レス) id: 598697b442 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤野
| 作成日時：2022年3月4日 17時
