胸焼け注意報 ページ22
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甘い。
向「ラウールにキスされたやろ…」
「ほっぺに一瞬やん…」
私を見る蜂蜜色の目も、掠れた低い声も、近付く香りも、全部。甘い。
オレンジの間接照明だけが頼りの薄暗い部屋。
東京には明日の朝戻る。
用意して貰った水炊きを食べて、乾杯もして、2日間の疲れも重なってホテルに戻る頃にはみんな程よく疲れていた。
まだ戻って来てないメンバーも居てたけど、戻って来てるメンバーはそれぞれの部屋に分かれたはずやのに…
部屋に入ろうとした瞬間、背後から甘い香りに包まれて。
そのまま傾れ込むように部屋の扉が閉まった。
向「…なびいた？」
「ん、」
耳元で低く響く声に背筋がくすぐったくなる。
向「なあ…なんで黙ってるん…」
「、それ…やめて…」
…絶対わざと。
だって、振り返って見上げた康二くんはにーって笑ってる。
向き合う形になっても、背中に回った手は組まれてて康二くんの作る輪っかの中に捕まってるみたいな状態。つまりがっちりホールドされてて。
康二くんが顔を傾けたと思ったらちゅ、と唇と唇が触れた。
向「んは 隙あり！」
「もー…」
微かにお酒の味がする。
そういえばさっきビールで乾杯してたっけ…
「ん、も…」
ちゅ。ちゅ。って、唇。ほっぺた。瞼。おでこ。鼻の頭。
ひとつひとつ印をつけていくみたいに降ってくるキス。
「す、ストップ！」
康二くんのほっぺを挟んで動きを止めると、なにー？って不満そうな顔。いやいや、なに？はこっち！
この甘い空気に耐えられへんくてどうにか逃げ出されへんか思考を巡らせる。すっかり逃げ癖がついてしまった。
向「…全部、俺のやもん」
「へ？」
向「ここも、ここも、」
「ん…」
確かめるみたいにひとつずつ触れる唇。
今度は唇だけ避けて。
向「全部、俺の。」
「康二く…」
蜂蜜色の甘い瞳がドロリと揺れて。
向「…もう誰にもあげへん。」
「んぅ…っ、…は」
パクリ。
最後に唇も食べられた。
甘くて甘くて、胸焼けしそうで。
必死に康二くんの腕にしがみついてたのに、どんどん溶かされて終いには立ってられへんくなってズルズルとその場に崩れ落ちた。
それでも康二くんからの甘ったるいキスは止まらへん。
頬に手を添えられて頭を持ち上げられると苦しくて段々ぼーっとしてくる。
向「んはっ…かわええ」
そうやって俺のことだけ考えててって耳に流れ込む甘い言葉。一度捕まったが最後。逃げようなんて無理な話。
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作者名：あむ
| 作成日時：2024年2月18日 13時
