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向井side。
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琥珀色の瞳が揺れる。
綺麗やな…単純にそう思った。
壊したくない。汚したくない。
…俺が台無しにしてもうたらどうしよう。
「俺…Aに触れるのが怖いねん…」
そう口にした瞬間、明らかに傷ついた表情をしたA。あ、違う。そうじゃなくて…
「ごめ…また俺、Aのこと……」
なんで何回も間違えてしまうんやろう。
傷つけたいわけとちゃうのに。
やっと追いついたのに。
こんなんやったら、また俺から逃げていく?
蓮「ごめん!今の無し!」
「へ?」
そんな俺の不安をAは簡単に吹き飛ばす。
蓮「康二くんの話最後まで聞かんと勝手に傷ついてごめん!」
「いや…えっと、」
あまりの勢いにしどろもどろになる。
そもそもAが謝ることちゃうのに…
するとぱっちり交わっとった視線が段々逸らされて。
蓮「私…思ってたより康ちゃんのこと大好きみたいで…康ちゃんに嫌われたくなくて…ちょっとしたことにもいちいちウジウジしちゃうだけやねん……」
モジモジしながらそんな可愛いこと言われるなんて思ってなくて。
「ずるいわ…」
蓮「っ、」
Aの小さな体を抱き寄せた。
「俺の我慢どうしてくれんねん…」
蓮「我慢…?」
「知らん男に襲われて怖い思いしたから…俺も一応同じ男やし、怖がらせてまうかもしらんって…やけどAに触ったら絶対歯止め効かんくなってまうって……」
蓮「それで怖いって言うたん?」
もうこれ以上辛い思いも怖い思いもして欲しくないねん。
やのに時々、どうしようもなく感情が溢れる時があって。
そんな俺を見透かすみたいに、
蓮「康ちゃんにやったら…何されてもいい。
傷つけられても、めちゃくちゃにされても…康ちゃんやったら怖くないよ?」
「っ、」
正真正銘のアホや。Aは。
自分を大事にすんのが下手くそやから、だから俺が誰よりも大事にしたい。
「Aが傷つくってことは、俺が傷つくってことやで?…それでもええの?」
我ながらずるい聞き方やとは思う。
やけどこうでも言わな、Aには伝わらへんから。
蓮「康ちゃんが傷つくのは…あかんけど…でも私なんかのことで傷つかんでも……」
「傷つくよ。言うたやろ?世界で一番、大事やって…」
こんなクサい台詞よお言わんって思ってたのに。
惜しげもなく言えてまうんやから、Aには敵わんわ。
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作者名:あむ | 作成日時:2024年2月18日 13時