点取り合戦 ページ1
.
デビュー発表をさせて貰った東京ドームに、私達だけで立てる日が来るなんて…隅っこで隠れるみたいに踊ってた頃の私に言っても信じて貰われへんやろうな。
ーーー…「Aちゃんの本気、見せてぇや。」
太陽みたいなあなたに向かって咲く花になりたい一心で。
ここまで走って来たよ。
「すごいなぁ…」
阿「んー？」
「んーん」
うわー！って初めてステージに立ったみたいに目に光をいっぱい集めてドームの天井を見上げる康二くん。
私の人生にも光をくれた。ほんま、すごい。
「…康二くん」
向「っ！…どうしたん？」
ビクッと大袈裟なくらい肩を跳ねさせた康二くんに胸の辺りがチクッとする。
…そんな目で見んといてよ。
私相手に、顔色伺うみたいな、そんな顔。
阿部ちゃんとか照くんが遠くから心配そうに私たちを見てる。
「見ててな。」
向「え？」
康ちゃんが言うたんやから。
本気、見せてって。
向「へ…」
目をまあるくしてポカンとする康二くんを置いてリハーサルの準備に向かう。
阿「…ほっといていーの？」
いつの間にか隣に居た阿部ちゃんが含み笑いで言う。
「ふふ いーの」
阿「康二びっくりしてたね」
「してたなぁ」
だって、ファンの子に向けるよりもずっとずっと甘いとびっきりの笑顔をお見舞いしたんやもん。
カメラ回ってないとこで康二くんに自分から声掛けたのも、笑ったのも、いつぶりやろう。
深「おじょーさん」
阿「お。ふっか」
「なぁに、おにーさん」
深「…調子ど？」
「ぼちぼち、かな」
私がそう返すとふっかさんは、そっかっていつものフニャって眉毛が下がる笑顔。
ポンポンって背中を叩かれて、がんばろーねーってどこかへ歩いてった。
…いつも通り。に、してくれてる。
「…がんばる。」
阿「あんまり気負わないでよ？」
阿部ちゃんが心配そうにする。
ついいつもより力が入ってたかも…
私が変に気合い入れたら空回りすることが多いのは阿部ちゃんも知ってる。…気をつけないと。
「大丈夫！とりあえず前髪は上げようと思って」
阿「え、それ佐久間平気？」
「んふふ どうやろ〜」
前髪上げると眉毛がキリッとして、気合いも入る気がするから。自分の中で頑張りたい時のおまじないみたいな感じ。
デコ出し蓮野推しのさっくんをびっくりさせようと思って開演ギリギリにヘアセットしたら、まさか腰抜かして拝み始めるとは思わんくて。照くんに怒られた。
…いたずら失敗。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2233人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あむ
| 作成日時：2024年2月18日 13時
