出会い ページ7
前に担当したタワーマンションと同じ管理会社が手がけた物件だから、間取りはなんとなく予想がつく。だいたいあのサンプルを持っていけばいいかな、って考えながら、数日後にそのマンションに行った。
ロビーで業者さんと待ち合わせて、７階の部屋まであがる。
大理石の床がつやつやと輝くエントランス。
モダンな雰囲気の木目がプリントされた壁が続く廊下を抜ける。床はダークトーンのカーペット。
厳重なロックをいくつかくぐり抜けてついたその部屋は、高級そうなシックな雰囲気がしていた。すべての部屋をぐるりと見て回って、窓の数と大きさを確認する。大体規格通り。リビングだけちょっと大きいかな。持ってきたメジャーで一応測る。
リビングの大きな窓からは、ちょっと離れたところのビルから反射した光がキラキラ入ってくる。
その時ドアが開いた音がして、業者さんが何やら話す声。
お客さんかな、って思って玄関まで戻ると、黒い帽子をかぶった全身黒い服の男の人がまっしろいスニーカーを脱いでるとこだった。
名刺をお渡しして、適当に大人みたいな挨拶をしながら、加藤さんとおっしゃるその男の人のお顔を拝見したらびっくりするくらい綺麗な人だった。
業者さんの説明を聴きながら伏し目がちに頷くお顔の綺麗なこと。
大きな黒目がゆるゆると揺れる。
一瞬、黒目のゆるゆるをじっと見つめてしまう。
きっと人見知りなんだろうな、っていうのは大人みたいな挨拶をする間一度も目が合わなかったことから判断した。
業者さんが電話でちょっと席を外した時に、窓それぞれに遮光度の違うカーテンを簡単に提案して、色とか柄をこのへんから選んでください、って薄いカタログを渡した。
きっと人見知りだったら家で一人で選びたいだろうな、って勝手に思ったから嵩張る布のサンプルは出さなかった。見たがる人もいるんだけど。
加藤さんは「ハイ」って低い声で返事して、そのままカタログを持ってじっと表紙を見つめてる。
「あ、お持ち帰りくださって構いませんので」
「あ、はい」
すん、って鼻をすすって、口元にグーにした手を近づけてる。
綺麗なお顔だな。
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きゃわのすけ(プロフ) - じぇにーさんのお話のゆったりと、じわじわと進む空気感がとても好きです。主人公の心の揺れる様を思いながら、同時に私の心も揺さぶられています。登場する書籍も既知のものだったので、今度読んでみたいと思いました。続きも楽しみにしています。 (2020年1月14日 1時) (
レス) id: d7bd95e595 (このIDを非表示/違反報告)
eRu(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています！私事ですが、実は占ツクで初めて読んだ作品が、じぇにーさんの『キャッチ・アンド・キス』で、物凄く｢シゲだー！｣と感動しました。これからも応援してます！Twitterをやっていない故、こちらから失礼します (2019年9月23日 19時) (レス) id: 2d1d6afcf3 (このIDを非表示/違反報告)
もか - いつも楽しく拝読しています。いつもと違う不穏な、寂しい空気感が情景描写と相まってとても美しいな、と思いました！転がる岩のような2人のこれからの進展がとても楽しみです。 (2019年9月17日 0時) (レス) id: fc5ce059f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：◯じぇにー◯
| 作成日時：2019年9月15日 0時
