ヒラエス ページ20
雨の日の朝は、大嫌い。
どんより暗いせいで起きる気がしない。
外に出たら出たで、傘をさすのが下手だし、靴が濡れるし。
今日は加藤さんのカーテンの取り付けの日だった。傘をさして駅に行くような気にならなかったので、車で行くことにした。
宏光に「車で行ってもいいかなぁ？」と聞くと「好きに使いなさいよ、そもそもあれはAのために買った車だから」って言う。
私を甘やかしすぎてない？って思ったけど、「毎日車で行けばいいじゃん！職場の近くに駐車場借りちゃえ！」ってにこにこ言われて、ちょっとましな気分になって家を出た。
赤いルノーを地下駐車場から出す。
去年宏光が買った、コンパクトカー。
ワイパーがせわしなく動くフロントガラス越しの雨の世界。
職場で私有車の使用許可を取って、午後になってから加藤さんちのカーテンを積んだ。
約束は、夕方だった。そのまま直帰できるように仕事を先に片付けておいた。
エントランスでインターホンを押してから解錠されるまでしばらくかかった。
玄関前のインターホン押してからも、少し待つ。
たっぷり待たされてから玄関が開いた。
眠そうな表情。あと髪の毛がもしゃもしゃ。
トリミング前のわんちゃんみたい。
加藤さんは前に訪問した時よりも打ち解けた雰囲気で私を招き入れた。
相変わらず、何ひとつ家具のないリビング。
家具入れてるっていう情報だったけど。
広いリビングの真ん中にラップトップと、ぐじゃぐじゃになったブランケット。
加藤さんがあくびしてるのを見ると、どうやら寝てたんだな。
「お仕事中お邪魔して申し訳ありません」
「いえ、よろしくお願いします」
語尾が「しゃす」って、聞こえた。
眠そうな声。
リビングから始めて、各部屋のカーテンを次々つけていく。
レールやタッセルフックは、事前に付けてもらってたから、あるものにさくさく引っ掛けていくだけ。
すぐ終わって、片付ける。
リビングに戻ったら、待ち構えていたかのように加藤さんがキッチンから出てきた。
いい香りがする。
「……コーヒー飲みません？今淹れたばっかりなんだけど」
「お気遣いいただきすみません」
アイランドキッチンのカウンターに、湯気の立ち上がるコーヒーカップが置いてあった。
シンプルな形の白。
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きゃわのすけ(プロフ) - じぇにーさんのお話のゆったりと、じわじわと進む空気感がとても好きです。主人公の心の揺れる様を思いながら、同時に私の心も揺さぶられています。登場する書籍も既知のものだったので、今度読んでみたいと思いました。続きも楽しみにしています。 (2020年1月14日 1時) (
レス) id: d7bd95e595 (このIDを非表示/違反報告)
eRu(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています！私事ですが、実は占ツクで初めて読んだ作品が、じぇにーさんの『キャッチ・アンド・キス』で、物凄く｢シゲだー！｣と感動しました。これからも応援してます！Twitterをやっていない故、こちらから失礼します (2019年9月23日 19時) (レス) id: 2d1d6afcf3 (このIDを非表示/違反報告)
もか - いつも楽しく拝読しています。いつもと違う不穏な、寂しい空気感が情景描写と相まってとても美しいな、と思いました！転がる岩のような2人のこれからの進展がとても楽しみです。 (2019年9月17日 0時) (レス) id: fc5ce059f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：◯じぇにー◯
| 作成日時：2019年9月15日 0時
