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日常 ページ2

爪の先につやつやとしたジェルネイルが施され終わったのをぼんやり見つめる。
一定の姿勢でじっとしていたせいで、肩が痛い。


ピンクベージュの爪先。
ネイルをしてもらうのはだいすき。
女の子として、きちんとしている感じがするから。
女の子、なんて年齢ではもうとっくにないのはわかっているのだけれど。


ネイリストさんにお礼を言って、きらきらした指輪ケースから指輪を取り出す。

元通り、左手の薬指にはめる。
私をいろんなものから守ってくれる、ダイヤモンド。



帰り道、ラッシュからずれた時間帯の電車に揺られながら、スマホを手に取る。

Facebookに、中学校が一緒の知り合いが先週ポストしたらしい写真を眺める。
結婚式の写真。幸せそうな。

高そうなドレス。
隣にいるのは、同じ中学校の子。つきあってたな、そういえば。

新郎新婦がつないだ手元をアップで映してるのは、ああ、その指輪を見せたいのね。


幸せそうに見える写真。
私の、勝ちだけど。
時期も、相手も、指輪も。


ぎりぎり、ってスマホを握りしめてたことに気がついて、息をついて画面をオフにする。


はやく、帰りたい。
おうちに帰りたい。



タワーマンションの玄関を開けると、リビングの明かりがついていた。

玄関の、結婚式の写真が飾ってある前に置いてあるキートレーに鍵を置く。
ヒールを脱いでから、お気に入りのスリッパに足をすべらせて、リビングへ続く廊下を歩く。



リビングの戸を開けると、ソファーにもたれて座っていた宏光は眠っていた。

Tシャツ一枚で、スマホを傍らに置いて寝てる。
ゲームしてたんだと思う。なんのゲームかは知らないけど。

物音に気づいて、ぼーっとした顔でこちらを見る。




「おかえり」
「ただいま、遅くなっちゃった」
「お疲れ〜」
「ごはん食べた?」
「一人で食べようか迷って、ソファー座ったら寝落ちた」
「何か作ろうか。シャワー浴びてくる」
「お湯張ってあるから入りな」
「ありがと」



お風呂からあがったら、キッチンで腕組んで冷蔵庫の中身を見てる。
料理なんかできないのに。

私を見て、「俺の渾身の目玉焼き食べる?」って聞くから、力が抜けてちょっと笑った。

〇→←帰りたい



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設定タグ:NEWS , 加藤シゲアキ , じぇにー   
作品ジャンル:恋愛
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きゃわのすけ(プロフ) - じぇにーさんのお話のゆったりと、じわじわと進む空気感がとても好きです。主人公の心の揺れる様を思いながら、同時に私の心も揺さぶられています。登場する書籍も既知のものだったので、今度読んでみたいと思いました。続きも楽しみにしています。 (2020年1月14日 1時) (レス) id: d7bd95e595 (このIDを非表示/違反報告)
eRu(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!私事ですが、実は占ツクで初めて読んだ作品が、じぇにーさんの『キャッチ・アンド・キス』で、物凄く「シゲだー!」と感動しました。これからも応援してます!Twitterをやっていない故、こちらから失礼します (2019年9月23日 19時) (レス) id: 2d1d6afcf3 (このIDを非表示/違反報告)
もか - いつも楽しく拝読しています。いつもと違う不穏な、寂しい空気感が情景描写と相まってとても美しいな、と思いました!転がる岩のような2人のこれからの進展がとても楽しみです。 (2019年9月17日 0時) (レス) id: fc5ce059f2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:◯じぇにー◯ | 作成日時:2019年9月15日 0時

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