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｢Aちゃん｣
｢何だ？｣
スーツの袖を控えめに摘まれる。
可愛らしい女性がやったら愚かな男はコロリといってしまうだろう仕草である。
彼の機嫌を損ねないために、私はこの手を離してもらうまでこの収容室から出られない。
｢Aちゃんは、神様の声って聞いたことある？｣
不意に放たれた質問は私の喉を締め上げるかのように絡みついた。
崩壊した世界で人類は不確定な概念に縋ることをやめ、神という傲慢を具現化した存在を捨て去っている。
もはや神の存在が残されたのは過去の栄華に縋る宗教や本の中に僅かばかり。
｢……俺はあるんや｣
だからこそ、目の前に迫るこの男を振り払えなかった。
彼の中に渦巻く知識が、感情が、私をこのまま収容室に留め置こうとしていると分かっていたのに。
肩口に顔を埋める彼をどうしても振り払えない。
｢頼むから、諦めんでくれ。もう少しやから｣
｢どういう……｣
首元に押し当てられるような感覚。
次いで引っ張られているような、少し濡れた感触。
｢……ん｣
雑に髪を掻き乱され、彼は私から手を離した。
コネシマといい豚といいオスマンといい、引っ付きたがるアブノーマリティの搬入が多いな。
ぼんやり考え事をしていると、肩を掴まれ強制的に扉の方を向かされた。
｢振り返ったらアカンで。……帰したないんやから｣
気配が少しずつ離れていく。彼の忠告に従って、私は逃げるようにこの収容室から出たのだった。
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志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (
レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志摩 | 作成日時：2019年7月11日 0時
