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「……美味いな」
「ほんと!?良かった〜……!」
先程と違い茶器の欠けを気にする必要のなくなったソーサーにカップを戻す。
別に私はここにお茶をしに来たわけではないのだから。
「君はここに来るまでどこで何をしていた?」
「ん〜せやな……森を歩いとったかも……」
「外郭の黒い森か?アブノーマリティといえどあそこで生きていくには……その」
「弱く見える?……まあ、あそこも色んな生き延び方があんねん」
意味有りげに笑う彼は酸いも甘いも噛み分けたようなことを言う。
私は外郭で生きるために暴力のみを磨いて、それ故に翼であるロボトミー社で今まで生きてこれた。
それしか知らなかった。
誰も、私に教えてくれなかった。
「なあAちゃん、ここには色んな人がおるんやな」
「……ああ、そうだな」
「せやんなぁ……たまに、変な音が混じんねん」
音、と言っただろうか。
彼がコネシマや他のアブノーマリティの存在を示唆したのは、収容室さえ突き抜ける聴力のせいなのか。
「でもな、Aちゃん来たら聞こえんくなった。ずっと耳障りやったんやけど助かったわ」
「私の退出中はどうだった?」
「何も無かったで。ほんまAちゃんのおかげやわ」
彼にとって耳障りな音とは何なのか。
それよりも私の存在がアブノーマリティに影響を及ぼしている現状の方が好ましくない。
どうしてどこまで行っても異常が付きまとうのか。
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志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:志摩 | 作成日時:2019年7月11日 0時