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「失礼、職員××。どうか安らかに」


「何も無い」の収容違反の名残が散らばる廊下を進めば、惨憺たる光景のメインルームが広がっていた。
ここ数日の収容違反でも1、2を争う酷さである。
そういえば「蓋の空いたウェルチアース」の搬入にあたって新人職員が数人入ったのだったか。
コーヒーの匂いが染み付いたケセドの部屋から、ビナーが使っていたものと同じような茶器を選んでいくつか持ち出す。
優雅なことはよく分からないから、とりあえず今日のところはこれで許してもらおう。


「オスマン、戻った」
「あっ待ちくたびれためう!」


先程作業に入った時は1歩も動かなかったオスマンがガゼボから出てこちらに駆けてくる。
分かってはいたが改めて目の前に立たれるとデカイなコイツ。


「あまり詳しくないから文句言わないでくれよ」


茶器と茶葉の入った紙袋を差し出せば、オスマンは怪訝な顔で受け取った。
中を覗き込んで危うく落としそうになっていたのは報告書に書かないでおいてやろうと思う。


「これ、全部俺が使っていいん?」
「足りないものがあったら職員に言うと良い。……いや、認知阻害か……定期的に御用聞きに来れるよう調整するよ」
「……そしたら早速お茶にするめう!」


彼の手元から一瞬にして消え去った紙袋を見て認識を改める。
可愛らしく見えようが何だろうが、コイツは理解の及ばない化物だ。
人類とは根本を分かつもの。……そうは思うものの、ガゼボに向かう後ろ姿は気が抜けるほど能天気だった。


「……どうぞ」


席に着いてからものの数秒で用意された紅茶は作業時に淹れたものより鮮やかな赤みを湛えており、香りも良かった。
茶器と茶葉だけでこうまで差が出るとは思えないし、彼の特殊能力に近しい作用だろう。

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志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:志摩 | 作成日時:2019年7月11日 0時

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