. ページ11
.
｢……管理人、もう俺はお前の言うこと聞いてやらんけど1個だけ譲歩したる｣
満足したのか舌舐めずりをしながら、今度は右頬に口づけられる。
いつまで耐えればいいのかと半ば自暴自棄になりかけた時、彼は不意に語り掛けた。
それは私に向けてではなく、職員の右耳に収まるインカムに向けて……その先の管理人に向けてだった。
｢作業は3日に1回でええ、Aをここに寄越せ。無理なら代わりに女を入れろ、暇潰しに抱き潰したるわ｣
それは死刑宣告だった。
私が何らかの要因でこの収容室に来れなくなった場合、女性職員が人としての尊厳を故意に散らされて死ぬ。
何もしないとは言うものの、訪れた私が何をされるかは分からない。
｢忘れるなよ、Aが来んくなって生贄も無いっちゅーなら収容違反を起こしたるわ｣
(……職員A、了承の意を)
｢聞こえとるわ｣
私が3日に1回訪れさえすれば彼はエネルギーを産み出し続けてくれる。
さらに他の職員による作業も必要無いということは、私が訪れる以外放ったらかしで構わないという事だ。
管理人からしてみれば暴走も収容違反も機嫌の上下も気にしなくていいアブノーマリティなんて有難くて仕方がないだろう。
｢A、心配せんでもお前が本気で嫌がることはせん｣
ゆっくりと密着していた身体が離れた。
それでもなお名残惜しそうに私の髪に指をくぐらせる元職員コネシマは、酷く人間的な微笑みを浮かべている。
｢……だから、俺を、気にかけていて。
俺にお別れの仕方を、教えて｣
足元でチワワが吠え、元職員コネシマは青空の瞳にありありと執着の火を燃やしながら私の髪に口を寄せた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 119人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (
レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：志摩 | 作成日時：2019年7月11日 0時
