【d!】お願いのお願い番外編【軍パロ】 (ページ15)

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風邪魔女⑤ ページ15

｢飲んで｣
｢……｣

力無くそっぽを向かれてしまった。いつもの強気で傲慢なAも可愛らしいが、人並みにワガママを言うAもまた可愛らしいなんて思うあたり、もう脳髄まで手遅れなのだろう。薬を摘んでいない指でAの唇をゆっくりなぞる。小さく逃れようとする動きがあるが、平時であろうと逃げられはしない以上今成功する道理はない。発熱とは違う朱がじわりと頬に広がっていく。体を支える名目で横並びに密着して座っていることで顔が近いのも一役買っているだろう。

｢A｣

ぎゅっと目を瞑って恥ずかしさを誤魔化すつもりらしい。一挙手一投足が可愛らしくて理性を揺さぶってくる。必死で閉じるあまり白くなっている唇にキスを落とせば、予想外だったのか目を見開いていた。見なければ良かったな、とほんの少しだけ後悔しながら体温の高い唇を貪る。涙を浮かべた瞳はその色と由来も相まって非常に心臓に悪い。
再び閉じられた瞼に少し安堵しながら舌でなぞれば、息苦しくなってきたであろう唇は容易く開いた。すかさず自分の口の端に薬を入れて、唾液とともに彼女の口の中に押し込んだ。歯列をひと舐めしてから顔を離せば、言葉がなくとも｢信じられないコイツ正気か｣と怒り狂っているのが分かる表情をしていた。

｢良い子に飲めたやんけ｣

水の入ったコップを渡すと力の入らない手で必死に飲もうとしていたので、底に手を添えてやる。空になったコップをベッドサイドのテーブルに置いて彼女の身体を横たえれば、ぬいぐるみや布団を器用に巻き込んで丸まってしまった。その様はさながら雪玉のようであり、思わず笑みが零れた。しばらく色素の薄い髪を撫でながら額の布を冷やし直したりしていればAは完全に寝入ったらしい。今のうちに食器をを厨房に戻してこよう。

｢……あ｣

パーカーの行方を探せば、布団に食われているのが見えた。布団の主であるAが大事そうに抱えているのが見えて、流石にアレを取り返すほど非道にはなれないなと思った。

しかしお前、ここまで煽りまくってくれたんだから治ったら本当に覚えてろよ。

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某お空系ゲームで古い戦場を舞台にドンパチやるイベントが終わったのでゆるゆる更新再開です。
公開してないだけで本編も進めているので、目に見える進度は半分くらいになるかと思われます。
気長にお待ちください。