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｢……俺、そんな、ガキじゃないんで｣
明らかに強すぎる力で目元を拭ったショッピくん。勢いよく上げた顔は泣きそうに歪んでいて、覚悟の決まった表情をしていた。
｢フィーがどういう状態なのかはよく分かんないっすけど、この前Aさんに民間伝承について聞きました。特定の状況を除いて、莫大な対価を要求される魔法があるって言ってましたよね｣
｢そうだね｣
｢例えば……命の逆行、とも｣
ひとらんの刀がぶれた。俺は政治とか難しい話は苦手だから、だから、もう少し聞かないと何も出来ない。
｢わざわざここにいる10人って指定したのは関係性と必要人数が比例しているから、ですか｣
｢80点｣
外道だ、と思った。たった1人を蘇らせるために10人を生贄にするのだ。生き返る側からしてみれば、起きたら自分のために親しい人間が10人死んでいる状況が生まれる。もし俺が何も考えずに選んでいたら、本当にそんな地獄が起こっていたかもしれない。ひとらんと大先生も流石に得物を下げて後ずさった。
｢……残りの20点が何なのか、後学のために伺っても？｣
エミさんの無謀さは時に蜂の巣を平気で叩く。これ以上は聞かない方がいいと分かっていても彼の好奇心は留まらないのだ。
｢私たちの使う魔法はどんなに小さなものであれ対価を要求されるというのが一つ。関係性と比例するのは人数ではなく心臓の数だというのが一つ。それから｣
奇妙な色合いの双眸が閉じられ、小さなため息がこぼれる。
｢……例え私を含む全員を対価にしたところで、成功する保証なんてどこにもないこと。まともな成功例なんてひとつもない。少なくとも両手に収まる数の血縁者では上手くいかないのが目に見えているような外法だ。……満足した？｣
｢……ええ。魔法という未知の技術には見識がありませんので、ぜひご教授頂きたいものです｣
｢お好きな時に呼んでくださいな。暇なら考えてあげよう｣
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作者名：志摩 | 作成日時：2019年5月3日 18時
