【d!】お願いのお願い②【軍パロ】 (ページ40)

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ホールには恐らく主催者などが並ぶであろうステージに、よく見れば感じ取れる程度の差異を付けられた区画分けされた座席が設置されている。周りを見渡せば白い仮面を付けた魔女と黒い雑面を付けた魔女の2種類しか居ないことに気がつく。これが北と南の区別だろう。
魔女達は明らかに痛めつけられた幼い子どもを連れていたり、俺と同じくらいの年齢の男が首輪とリードを付けられて立ち尽くしていたりと惨い有様である。これは魔女……Aがわざわざ話したがらなかったのも分かる。

｢-----｣
｢やあ薬理の。私は不本意だが火刑と呼ばれている｣

Aは雑面を付けた魔女と話しているようだ。内容は分からないが恐らく簡単な自己紹介を済ませているのだろう。薬理と呼ばれた魔女は誰も連れていないようで、狂気に塗れたこの空間でいくらかマシに見えた。

｢……分かった。有事の際はまた｣

薬理との話しは終わったらしい。有事の際、とは言うが何か起こるような集会なのか。むしろ揉め事を起こさないための集会だと聞いたはずだが。

｢そろそろ始まる。何かおかしいと思ったら教えてくれ。もし私が動けなかったら後ろの扉に向かって逃げろ、国内のどこかにランダムで出るようになってるからどうにか出国して帰ってくれ｣
｢お前は｣
｢捨て置け。動けなくなったらその時点で死んだも同然だ｣

魔女でも緊張するのか、繋いだ手に力が籠る。壇上に人が上がり、何らかの魔法を発動したのか大きな声が届く。もちろんそれが一体どんな意味を持ったものなのかは俺にはわからない。恐らく開会の挨拶をしたのか魔女が下がり、別の魔女が出てくる。
次の魔女はぼんやりとした男と仲睦まじく腕を組んで登壇した。身なりがよく、恐らく魔女の中でも権力を持ったやつなのだろう。身振り手振りを交えて演説をしているが、些か嫌な予感がする。こうもわざとらしく演技掛かった話し方をする時、人は必ず用意した爆弾を起爆するのだ。

｢--------！｣

恐らく演説の締めに一際大きな声で何事かを話した後、会場の端の方で悲鳴が上がった。それも1つではなくかなりの数である。そして目の前に立って演説を聞いていた2人組の仮面の魔女が勢いよくこちらを振り返り、俺とAそれぞれに手を翳した。