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｢エミさん、華鬘草って何か別の名前あったっけ？｣
｢華鬘草、ですか？さあ……｣
｢枠が違うのかもしれない。属名とか科名は｣
｢ケシ科のコマクサ属ですね｣
違う。諦めて1度聞きに行こう。その場を離れるために断りを入れようと口を開いた時だった。
｢ああ、コマクサ属はディセントラ属とも言いますね｣
｢それやエミさん！！｣
ショッピくんが忘れないようにメモをしてくれとるし、これであとは俺たちでも調べられる。
｢ディセントラ属、ですか。どこで見たんですか？｣
｢あー……Aが、その、家族の墓に供えてるのを見たんよ｣
｢華鬘草を？わざわざ？｣
Aをよく思っていないひとらんの前でAの話を持ち出すのは気が引けたが、出さないわけにもいかないだろう。案の定眉間にシワが寄ってしまった。
｢墓参りに華鬘草は確かに不自然ですね。花言葉か……あるいは造形そのものに意味があるのかのどちらかでしょうね｣
｢造形？｣
｢ディセントラ属はその形から心臓に見立てられることがあるんです。色や品種によっては血の流れる心臓なんて呼ばれたり、も……｣
心臓に見立てられる花をわざわざ調べて、墓に供える。ついこの間心臓が云々という話を聞いたばかりだ。エミさんもおよそ察しがついたのか顔色を変える。
｢……もし、もし彼女が人を蘇生させる魔法に詳しいのが、過去に実行したことがあるからだとしたら。10人に満たない血縁者の心臓を使ったのなら、その墓に眠る人達には心臓がない｣
｢……胸くその悪い話｣
確証はない。けれど、Aには瞳の色が変わるほど好きだった故人がいるはずなのだ。
｢俺はこの後直接聞くけど｣
｢っ、ひとらん！？｣
｢じゃなきゃ進まなくない？ただでさえあの女は隠していることが多すぎる｣
総統室へと足を向けた彼が止まることは無いだろう。エミさんとショッピくんと顔を見合わせ、彼について行って話を聞くとこに決めた。
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作者名：志摩 | 作成日時：2019年5月3日 18時
