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｢嬢ちゃん美人だから下手な宝石じゃ霞んじまいそうだなぁ。普段店頭には置いてないんだが、これとかどうだ？｣
店主が棚から取り出したのは恐らくネックレスが入っているであろう箱。店頭に出さないということはかなり高価な代物だろう。
｢コイツは魔女の瞳って宝石を使ったネックレスだ。本当に希少なもんだから勿体なくて売るに売れなくてなぁ……｣
アクセサリー自体は線が細く控えめな印象だった。だが一際目を引くのは変わった輝きを放つ宝石だろう。店主が手に取って箱を開けた時には青く見えていた宝石が、ガラスケースに置かれるまでに赤や緑や黄に色を変えたのだ。
｢すげぇだろ！角度によって全然色が違って見えるんだ｣
素直に綺麗だと思った。そして店主の見立て通りAさんに似合いそうだ、とも思った。
｢不思議っすね。魔女の瞳には由来とかあるんすか？｣
｢さあな。ずっと昔からここらでは魔女の瞳って呼んでる宝石さ｣
Aさんなら知っているだろうか、と目を向ければちょうどこちらを向いた彼女と雑面越しに目が合った。先程恋人扱いされたのが今になって恥ずかしくなってくる。
｢……確かに、魔女の瞳は色が変わることがあるらしいな。強い感情を抱く相手の瞳の色やパーソナルカラーを写し取ると言われることもあって、その相手と何らかの形で別離すると色が濁るんだ｣
｢へえ、嬢ちゃん詳しいんだな……初めて知ったぜそんな話｣
｢趣味だ｣
色が変わる不思議な宝石が気に入ったのか、Aさんは子どものようにあらゆる角度から見ている。Aさんも瞳の色が変わるのだろうか。だとしたら青系の宝石を贈るのはやめた方がいいかもしれない。
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作者名：志摩 | 作成日時：2019年5月3日 18時
