【d!】お願いのお願い②【軍パロ】 (ページ17)

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｢い、や……まあ｣

視界の端に苦虫を噛み潰したような顔をしたゾムさんが見えた。そう思うと女に触れられた気味の悪さより抱きしめられたという役得感が勝る。熱を持ち始めた顔を隠し、何とか気を持ち直す。

｢それ、手紙、回収出来たんすね｣
｢ああ、そうだね｣
｢とりあえず日付だけ確認した方がええんちゃう？｣

まだ気分が落ち着いていないのか乱雑に封筒を破ると中の紙が勝手に開く。魔女が魔女に送る手紙というのはこういうものなのだろうか。

｢……2週間後ね。前回は北の主催だったから今回は南でやるそうよ｣
｢南……？魔女にも派閥とかあるん？｣
｢大まかに南北で別れていて、何となく険悪だな。個人単位だとその限りでもないが｣

その限りではない実例を目にした後だと言葉が重い。

｢集会の日付も場所も分かったし、旅行の目的はおよそ達成だな｣

およそということは、まだ彼女には用事があるのだろう。俺達は旅先に具体的な目標を持っていないから、彼女のもの以外はありえない。

｢行こうか。墓参りだ｣

検討はついていたが、彼女からは家族という存在が感じられなかった。やはり亡くなっているようだ。

｢Aの家族ってどんな人だったん｣
｢祖母も母親も魔女で、それぞれ旦那の国籍はバラバラだった。……南の暖かい国出身の祖父には酷な環境だったな｣

サクサクと新雪を踏み鳴らす足取りは話題に関して軽い。ここまでではないとはいえ、雪深い国である我々国に住む俺達もさほど苦なく歩いていく。