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そんな考え事をした瞬間暖かかった城内の気温が急激に下がり、肌を刺すような冷気に晒された。思わず目を開ければ、そこには見慣れた城ではなく一面の銀世界が広がっていた。
｢なんやこれ……っ！？｣
｢は、えっ｣
我々国でもなかなかお目にかかれない見事な景色に目を奪われた刹那、Aさんと手が離れた。同時に浮遊感に襲われ、同じく手を離されたであろうゾムさんの悲鳴とともに落下した。
｢…………う、わ｣
地面に叩きつけられる感触は無かった。一面の銀世界が映っていた視界は一転して、うず高く積もった雪と未だ雪をふらせ続ける曇り空になっている。起き上がったとしても上には上がれないし、そもそも起き上がれるかどうかと積雪具合である。
極めて限定された視界の中で、自分とゾムさんの荷物とともに浮いているAさんが肩を震わせているのが見えた。イタズラが成功して楽しそうなのは何よりだが、雪壁が崩れて生き埋めになるのが怖くて身動きが取れないのではやく助けて欲しい。
｢……ご、めん。何とかする、ふふ、からね｣
Aさんの表情こそ見えないものの、笑いを堪えきれていない。いつか絶対泣かせてやろうという決意のもとゾムさんと同盟を組んだことをぼんやり思い出していると、ふわりとした熱を感じた。それを皮切りに見る見るうちに周囲一帯の雪が解けていき、歩きやすい程度の積雪となった。
無数の木が生えていることから、ここが森の中に出来た広場のようなものだと分かった。起き上がって雪を払えば、Aさんも粗方雪を解かし終わったらしい。
｢さて、極北の豪雪地帯へようこそ。死ぬほど防寒してきて正解でしょう？｣
｢雪ん中に落とされなきゃ最高のロケーションなんやけどな｣
｢一瞬過ぎて旅行って感じしないっすね｣
数メートルあった積雪がなくなったことでAさんも地に足をつけた。荷物が浮いているところを見るとこのまま運んでくれるようだ。俺達の周りだけ雪が穏やかなのも何か魔法を使ってくれているのだろう。何も言わないくせに1人で勝手に気を回す、Aさんらしいやり口だ。
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作者名：志摩 | 作成日時：2019年5月3日 18時
