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…………なんてことになるわけもなく、その後は普通にお喋りを続けていた。休日の話、好きな食べ物の話、敷地に入り込んだ野良猫を世話するゾムの話。午後の2時ほどから始めたお茶会も、気づけば夕飯の時間が迫っていた。
「……そろそろ、お開きですね」
「せやな」
ポットの中の紅茶もちょうど飲みきって、あとは夕焼けが夜闇に飲まれていくのを眺めるくらいしかすることが無くなってしまった。久々に揚げ足取りもからかいもない会話を楽しんだ気がする。いい休日だった。
「また誘ってな」
「次は少し間を空けて、話のネタを溜め込みましょうか」
「ええなそれ、乗った」
立ち上がったAに行きと同じく手を差し出せば、縮まった距離の分だけ力を込めて握られた。夕方の風に吹かれて花のような甘い香りが鼻腔をくすぐっていく。
お茶会の最中ほんのり香っていたこの香りは、どうやらAの付けている香水らしい。風が吹くのに合わせてスンと鼻を鳴らせば、控えめながらも女性らしさを主張する甘やかな匂いに心がざわついた。
ああ、これ、この匂い。
「好き、やなぁ」
「え」
「…………あ?」
中庭から廊下に戻り、手を離す寸前の事故だった。
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餅宮(プロフ) - あびゃ()、この話の書き方も展開も好きです、可愛くてしんどくて心臓が固まって息切れを起こしました。好きです(迫真)ありがとうございました。次回作楽しみにしてます! (2020年6月2日 14時) (レス) id: 183ec0d7a1 (このIDを非表示/違反報告)
折り紙(プロフ) - コメ失礼します。もうなにもいえません。貴方の作品が大好きです (2020年6月2日 1時) (レス) id: 9f4a4ff714 (このIDを非表示/違反報告)
ミコミコ(プロフ) - つ…ついに終わってしまった…面白かったです!とくに書記長さんの心臓がw次回作、もしくは続編楽しみにしてます()お疲れ様でした! (2020年6月1日 22時) (レス) id: 9e8740a182 (このIDを非表示/違反報告)
アケメネス(プロフ) - 勢いと勢いを崩さない文章が素敵でしたすき!!!!!次回作楽しみに待ってます。できればもうちょっとだけちゅぢゅきがみたいでちゅ (2020年6月1日 21時) (レス) id: ef9d22381a (このIDを非表示/違反報告)
闇ちょこ(プロフ) - おおお終わってしまった…個人的に書記長の恋に世話?を焼く総統が好きでした((もう10周見てきます (2020年6月1日 20時) (レス) id: f89a326571 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:志摩 | 作成日時:2020年5月26日 18時