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とりあえず、うみに説明しないと。
「海斗が」
「あぁクラ居たのに呼んだのまずかった?喧嘩中?」
「…昨日と同じ服だった」
私の言葉に息を止めたのが分かった。
「マジか…いやマジで?」
「私もそう思いたいけど…昨日一緒に買ったピアス、ミカ先輩つけてるの見て、あーって」
「さっき自慢されたわ…」
「多分、泊ったんだよね」
乾いた笑いが漏れた。
あの海斗が。
お互い近過ぎて、そんな相手が今までいなかったことは容易に分かる。
だから。
キスも、その先も。
初めての相手は、間違いなく、先輩で。
同じ駅の終電で降りたのに。
私を送り届けてから向かったんだろうか。
思えば、そわそわしたように携帯を見ては、こちらの様子を伺っていた。
「クラも何か理由があったのかもしれないよ」
「うん」
「次の日1限からって分かってんのに、わざとそんなことするような奴じゃないでしょ…Aちゃんと会う可能性だってあるのに」
「もしかしたら先輩が呼び出したのかも。最近元カレさんに家の前で待ち伏せされることが多いらしくて…ストーカーみたいに」
「あ〜正直、それなら行きかねないな…」
「ふたりって付き合っては、ないよね」
声が震えた。
無言のうみが、何かを言いかけて、また口をつぐむ。
心の中では、いつかそうなるかもしれないって思ってた。
彼女ではないミカ先輩に触れて、どんなことを思ったんだろう。
きっと、海斗のハグはぎこちない。
『もう大丈夫だから』って安心させるような言葉をかけて、涙をぬぐうんだろう。
キラリと光るピアスにちゅって口づけ。
途端に色気をまとった海斗が、ゆっくりと先輩を押し倒す。
思わせぶりに腕を回して、無言でもっと、の合図。
その余裕のある表情を見て、照れたようにはにかむんだ。
「好きなようにしていいよ」って。
簡単に煽られたら、きっとそのまま、
涙が溢れそうになって、あわててまばたきをした。
いつの間にかぐしゃぐしゃになったプレゼントの紙袋が、まるで今の私みたい。
想像ばかり膨らんで、苦しくて。
痛みを逃すように唇を噛みしめる。
突然うみがすくっと立ち上がって、微笑んだ。
「…Aちゃん、行くよ」
「え?どこに」
「もう授業出ないっしょ」
強引な言動とは裏腹に、こんな優しい顔。
初めて見たかもしれない。
私の荷物を持っていくから追いかけるしかなくて。
あ、たった今、気が付いた。
うみの髪も海斗と同じ、金色だ。
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N11(プロフ) - maminaさん» 初めまして、コメントありがとうございます。揺らぎからですか!引き続き読んでくださっているようで、感謝しかありません。こちらの不手際でご迷惑をお掛けいたしました!公開しましたので是非ご覧ください。 (2021年3月7日 22時) (レス) id: f61069127a (このIDを非表示/違反報告)
N11(プロフ) - あさん» 初めまして、コメントありがとうございます。こちらの不手際でご迷惑をお掛けいたしました!公開しましたので是非ご覧ください。 (2021年3月7日 22時) (レス) id: f61069127a (このIDを非表示/違反報告)
N11(プロフ) - キさん» 初めまして、コメントありがとうございます。泣きそうになりながらなんて…!とても嬉しいです。こちらの不手際でご迷惑をお掛けいたしました。公開しましたので是非ご覧ください。 (2021年3月7日 22時) (レス) id: f61069127a (このIDを非表示/違反報告)
mamina(プロフ) - 初めまして。揺らぎから大好きでLost&Foundも毎回楽しみに読んでました。#2に続いてまつくのダークサイドみれるのかと思ってドキドキです!宜しければパスワードを教えて頂きたいです。宜しくお願いします。 (2021年3月7日 21時) (レス) id: 9fd2043a8e (このIDを非表示/違反報告)
あ - 初めまして!最近からLost & Found読ませていただいています!よろしかったら#2のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年3月7日 20時) (レス) id: 89732c56da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:N11 | 作成日時:2021年2月12日 0時