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少し軽くなってくるんと巻かれた毛先と、栗色に染まった髪。
「はい、おーわり!おつかれさま、めっちゃかわいい!ねぇ…今度撮影とかあるんだけど良かったら、」
「いやそんな。ありがとうございます、なんか自分じゃないみたいで…」
振り返ると、携帯から顔を上げたうみと目が合った。
一瞬固まって、
「あーー、やったわしめこれ」
そう言って口を手で押さえ、目を逸らす。
想像していなかった反応に、こちらも言葉が出てこない。
そんな私たちを見て、七五三掛さんはニコニコ。
「気に入ってもらえたようで」
「…うん、急なのにさんきゅ。来週来た時にまとめてお願い」
「はいはい〜わかってますよ」
アイドル顔負けのキランっとした笑顔の七五三掛さんが「じゃあね、Aちゃん」って。
きちんと挨拶もできないまま、お辞儀をして駆け足で追いかけた。
「うみ!お会計」
「いいから。それより今から服見に行くのも付き合ってよ」
「でも、」
「アーーー!わかったわかった。じゃあ一個だけお願い聞いて?」
「お願い?…うん、変なこと以外ならなんでも聞くよ?」
立ち止まったうみが、紙袋を指さした。
「それ、ちょーだい」
「え?でもこれ…もうぐちゃぐちゃだし」
「見ての通りね」
「それに…」
「実はクラにあげようとしてたでしょ」
「え?どうして」
「Aちゃんが来る前話してた。俺のために買ったらしいじゃん。でも、それ握りしめながらクラのこと見てんだもん…バレバレよ」
紙袋を奪い取った彼は、中身を開けて、取り出す。
帽子を被ってニイッて笑った。
結局、うみのものになる運命だったのかな。
「顔が小さいから…何でも似合う」
「んへへ、ありがと。Aちゃん」
本当に自然に。
手持無沙汰になった私の右手をとって繋いだ。
その温もりに救われた気持ちになって。
なぜか泣きそうになる。
何枚も上手なうみに、振り回されるのも悪くないかもしれない。
「Aちゃんさ〜足細いんだから、もっと出しなよ。あ、すみません!これも試着で」
「ねぇ、私こんなの着れないよ」
「大丈夫、スタイル良いんだから勿体ね〜ってずっと思ってたの!あ、このパンツも似合いそう」
「うみの好みじゃん」
「当たり前」
「…。」
「俺のこと信じて?ね?」
そんな顔でおねだりされたら断れない。
それに。
うみの好みとは言いつつ、やっぱり趣味が合うんだ私たち。
好きなものが一緒の人と居て、楽しくないはずがない。
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N11(プロフ) - maminaさん» 初めまして、コメントありがとうございます。揺らぎからですか!引き続き読んでくださっているようで、感謝しかありません。こちらの不手際でご迷惑をお掛けいたしました!公開しましたので是非ご覧ください。 (2021年3月7日 22時) (レス) id: f61069127a (このIDを非表示/違反報告)
N11(プロフ) - あさん» 初めまして、コメントありがとうございます。こちらの不手際でご迷惑をお掛けいたしました!公開しましたので是非ご覧ください。 (2021年3月7日 22時) (レス) id: f61069127a (このIDを非表示/違反報告)
N11(プロフ) - キさん» 初めまして、コメントありがとうございます。泣きそうになりながらなんて…!とても嬉しいです。こちらの不手際でご迷惑をお掛けいたしました。公開しましたので是非ご覧ください。 (2021年3月7日 22時) (レス) id: f61069127a (このIDを非表示/違反報告)
mamina(プロフ) - 初めまして。揺らぎから大好きでLost&Foundも毎回楽しみに読んでました。#2に続いてまつくのダークサイドみれるのかと思ってドキドキです!宜しければパスワードを教えて頂きたいです。宜しくお願いします。 (2021年3月7日 21時) (レス) id: 9fd2043a8e (このIDを非表示/違反報告)
あ - 初めまして!最近からLost & Found読ませていただいています!よろしかったら#2のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年3月7日 20時) (レス) id: 89732c56da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:N11 | 作成日時:2021年2月12日 0時