【歌い手】恋愛交響曲。ver.B【大型コラボ】 (ページ22)

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「そろそろ…やな。」

「センラ…君……？」

「ん？いや…眠くなってきたやろ？」

「うん…でも…まだ寝たくない…」

お菓子を食べてしばらくしたら、ゆらゆらと体を揺らし、時には叩き
眠気を覚まそうとしている彼女。その様子が愛おしくて、思わず撫でてしまえば
逆効果だったのか、ポスりと俺の膝に倒れこんできた。

　
「…センラ君。」

「なんや？」

「…大好き。」

「俺も……愛してたで。」

さらりと髪をどけ、その額にキスを落とした。
今日だけ、やから。俺のモノにするのは、せやから少しくらい許して……
くすぐったそうに微笑み、その頬を真っ赤にした彼女は、今にも寝そうやった。
……それはつまり、この時間の終わりを意味した。

「また…会える、よね？」

「………当たり前やろ。」

「よか……った……」

「おやすみ、A……ごめんな。」

ありがとう、そう言って彼女は瞼を下ろした。
次に目覚めた時は、彼女は俺のことを忘れているやろな。
坂田が作った、忘れ薬と眠り薬は言わずもがな強力やから。

あぁ、今日で終わりなんやな。
物思いに更けてれば、ぼろっちい小屋のドアがギィと音を立てて開いた。
そっちに視線をやれば、黒と赤の衣装に身を包んだ…仲間がいた。

「センラ。」

「…坂田、着とったんか。」

「ちょっと前、まーしぃに呼ばれてな。」

「そか……後、頼むわ。」

「おう…別れの挨拶はえぇの？」

「…そう、やな。」

　
膝の上で寝ていた彼女をそっと抱き上げて坂田が作り出したソファーに寝かせた。
せめて、この後もいい夢を見られますように…

　

「A、大好きやったで。…次に生まれ変わった時は、同じ存在で同じ身分で会えるとえぇな。」

「うっわ、センラキザやなぁ…」

「うっさいわ。」

「んじゃ、伯爵のお屋敷のお嬢様の部屋のベットの上に…そいやっ！」

　
その掛け声で、彼女の姿は粒子となって消えていった。
今頃は、誰にも気づかれずに自室のベットで寝ていることだろう。

…さよなら、愛しい人。

　

　
「何度生まれ変わっても、きっと会いに行くから。待っててな、A。」

　

　
　
星合の夜、最後の逢瀬は…俺だけの思い出になった。