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ベッドに沈み込む2つの影は、物事を客観的に見る事ができるようになる頃には、きっと明日には、虚しくて自分の顔を歪ませるような光景になり果てるのだろうか。
そんな事を思いながら、美味しそうに、熟れたような綺麗な色をした唇に食らいつく。彼女の唇を色付かせる淡いカラーのグロスは、案外変な味はしなかった。
｢あはは、メイクとってないから、リップの色移っちゃったね｣
｢そんなん気にしてないし、さっさと服脱いで｣
｢冷たいなぁ……んー、ちょっと待って｣
冷たい俺の返しに、彼女は嬉しそうに頬を緩ませた。その姿を見届けてから、コンビニで買ってきたピンク色のパッケージのものをベッドヘッドに置いて自分も上着を脱ぐ。
さっき気づいたことなのだが、彼女はマゾなのかなんなのか分からないが俺からの冷たい返事に対しては異常に喜んで、分かりやすく頬をうっそりと染めていた。
何故だかその嬉しそうな顔を見るのが嬉しくて楽しくて、満たされるような、そんな感覚すらした気がした。だから少し乱暴に掴んだ手首で自分の方へ引き寄せてから、これまた雑にシーツの上へ押し倒す。
あはっ、とサキュバスを思わせる艶笑を浮かべた彼女。かわいい。かわいいのに、綺麗で……変な気分になる。
｢坂田くん、下の名前、教えてよ｣
｢やだ｣
｢いじわる。いいじゃん、嘘でもいいから｣
｢そんなん必要ないやろ。はよ目瞑って、足開いて｣
なんだっていい。
今は目の前のこと。
Aに、
明日なんて知らない。
道に捨てられていたとしても、金をむしり取られて身ぐるみを剥がされていたとしても、今は彼女を愛おしいと思った。
｢……そのうるさい口塞いで、いーっぱいきもちーことして、枯れるまで鳴かしたるな｣
その時の俺の口角は、自分で思っていたよりもずっと上がっていた。
END
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