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「…っ、う、」
自分の家の玄関を入って扉を閉めたら、涙が止まらなかった。
私が居なくなれば次の女の子。そんな簡単に呼べるんだ。
「もう、嫌だあ〜〜」
年甲斐もなく玄関に座り込んで、思いっきり泣いた。
彼の為に付けたマスカラも流れていく。
「私、ただの薬箱じゃない、のに」
「あんなに、看病して、あげた、じゃない…！」
ホントは、大好きなの。
私を夜中でもお構いなしに呼んで、頼りにしてくれるアナタが。
ステージ上のキラキラの姿も、歌っている時の真剣な顔も、ゲームしてる時に子供みたいに楽しそうにする顔も、私の前ではゆるゆるでだらだらで、時々ふにゃっと笑う笑顔だって、全部全部。
「もう、どうすればいいの…」
結局、都合よく使われていただけなんだ。
この気持ちを、何処へ持って行けば良いのか。
誰か、だれか、
「たすけてよぉ…！！」
＊＊＊
ピンポーン、ピンポーン。
ドアのチャイムの音で目が覚めた。
外はもうだいぶ日が昇っている。
昨夜(っていっても、もう明け方近かった)は結局、ソファーへ移動したものの泣き疲れたまま寝てしまったらしく。頭はガンガンするし、身体は固まっている。
ピンポーン、ピンポーン、
チャイムが鳴り続くも、なかなか身体が動かせない。
宅配便なら、申し訳ないけど、再配達お願いします…
そのうち、ドンドンドン！と、扉を叩く音がする。
流石に宅配便の人もそんな事までしないと起き上がろうとしたところで、
「A！居るんやろ！A！」
呼ぶ声で、飛び起きた。
慌てて玄関のドアを開ける、と、数時間ぶりの彼が、そこに居た。
「うわ、ひっでえ顔」
苦笑しながら言う志麻くんに、あんたのせいだよ、と文句も言いたいとこだったけど、それよりも何故来たのか、戸惑いが隠せない。
ようやく出せた言葉は、
「え、ね、熱は…」
アホか私は。それよりも言う事あるだろーに！
脳内で大会議が繰り広げられていたけど、彼の次の一言ですっかり静かになった。
「下がったよ。お前のお陰で」
…なに、それ。
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