【歌い手】 優しさを知らない少女の歩む道には。

三十七歩… ページ45

『…え？』

まふ「ボクが離れるとでも思ってるわけ？
離れるわけないじゃん、見捨てるわけないじゃん！！」

まふくんは泣き叫んだ。
涙で顔もぐしゃぐしゃ。

まふ「ボクがそんな中途半端に、(お名前)ちゃんと居るとでも思った?
どうでも良い奴に、毎日泊まり込んでまで心配する？」

『そ、それは…』

まふ「Aちゃん、もっと周りを見てみて？
Aちゃんの周りには、優しさもちゃんとあるんだからっ！！」

『…？ねぇ、まふくん。優しさって、何…？』

まふくんが泣き喚いていたなか、一つの言葉が突っかかる。

“優しさ”。

言葉こそ知ってはいるが、そもそも優しさってなんなんだろう？
人を愛でる事？人に笑いかけること？
・・・分からない。

まふ「優しさってのは…う、うーん…
人を気遣う気持ち、かな。」

『人を気遣う…？』

まふ「た、例えば、困ってる人を助けるとか。」

『そんな人いないよ、まふくん夢の見過ぎだよ。
みんな何も知らないくせして、嘲笑うじゃん、バカにするじゃん！！
…誰も、手なんて差し伸べて、くれなかったっっっ…！！！』

アタシも、涙が溢れてきた。
今まで、優しかったはずの父に捨てられ、母は暴力的になり、
同級生にも馬鹿にされ、居場所なんて無かった。

『アタシには、今も昔もまふくんだけだった…！！
名前を呼んでくれたのも、微笑みを見せてくれたのも。
まふくん、だけだった…！！』

まふ「…じゃあ、ボクがまた、変えてあげるよ。何度だって、教えてあげる。
人のぬくもり、優しさ、愛情...。
なんだって教えてあげる、ボクがAちゃんにあげるから。
だからAちゃん、教えてよ。…ぶつけて…？」

『ずっと寂しかった！！誰も彼も怖くて、怯えているのに、
誰かに甘えたかった、縋ってみたかった！！
アタシも…みんなみたいに笑い合いたかった！！
お父さんにも、お母さんにも、友達にも…！！』


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語り手

“アタシは、幸せな自分”
そう、私は思っていた。でも、実際は違った。
アタシこそが、本当に辛く、苦しもがいていたのだ。
私はそれに気づかず、アタシを羨んだ。


…この世で、Aが幸せと笑えるのは。
優しさを知れるのは、まだもう少し先のようだった。


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作者です、どうも。
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あと、まだお話は終わりませんよっ!?
Aちゃんには幸せを掴んでもらいます!!

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