【歌い手】 優しさを知らない少女の歩む道には。

二十三歩... ページ30

まふまふside

ボクが彼女の名前を言うと、
凍り付いたような顔をした。
この子は何を知っいるのだろうか。


貴『…失礼ですが、先に聞きますね。
まふまふさんは、なぜ彼女を知っているのですか。』


な、ぜ。
なぜと言われても。
答え方がわからない。
下手したら、この子はどうなるのだろう。

まふ「一応、友達だった、と思う。
ボクが唯一、信じれた子、かな。
詳しいことは、君の言葉次第で教える。」


うやむやにした方がいいかもしれない。
この子が、Aの何かを分かるまで、
深いことは言いたくない。


貴『ありがとうございます。
…彼女を大切に思っている方には、
残酷な言葉だと思いますが、それでも聞きますか。』


苦しそうな顔をする。
この子は、なぜこんなにも悲しそうな顔をするの？


まふ「…聞かせて。受け止めるから。」


貴『後悔しないでくださいね。
まず、まふまふさんはご存知か知りませんが、
彼女はまだ生きてます。
ただ、、、記憶を失っています。』


鈍器で殴られたような、
とはこのことを言うのだろうか。
Aはまだ生きている。
でも、記憶がない。
それはつまり、Aはもう
ボクのことを知らない。


もう二度と、ボクはAに名前を呼ばれない。
もうAは、、、

Aは＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿。


気付けば頬に何かが伝う。


この子は、Aのように
ボクをあやしてくる。
何も言わず、ただ背中をさすってくる。


貴『…まふくん。』


ボクを呼んだその声は、とても懐かしくて。
ボクは何もかも忘れ、この子にしがみつく。


まふ「A…っ！ごめんねA。
ボクが、ボクが弱くてっ。
守ってあげられなくて…
そばに、いてあげれなくてっ…。
ごめん、ごめんね…っ
A…」


ボクよりも小さい身体なはずなのに、
この子に抱きしめられるととても暖かい。
背中をさする手のぬくもり、ボクを呼ぶ声。
何もかも、Aと重ねてしまう。


貴『♪〜っ…』


ゆっくりと口づさむこの歌は、
Aがよく歌ってくれた曲。
Aは独り言をつぶやくかのように、
感情や慰めを歌で歌うことが多かった。


“secret base〜君がくれたもの〜”

いつもAが歌っていたこの歌は、すごく大好きだった。
今でもつらい時に聞くし、自分で歌ってみたをあげたほど。


気付けばボクは、泣き止んでいた。


貴『…懐かしいなぁ。』


まふ「ど、して…？」


ふと返してしまったが、
この質問はあまりよくないみたい。

ーーーーー
luzくん、ごめん。
空気化…。

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