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「…蛍介、大丈夫?」
「あ、ありがとうA…。Aこそ平気?」
「俺は大丈夫」
蹴られた衝撃が残っていたが堪えて蛍介に手を貸して立ち上がると、男が再びポケットに手を突っ込んだまま俺たちを品定めするように見ているところだった。
「俺としては見逃してやりたいところだが…。雇い主の命令に背くわけにはいかなくてな」
例えこの美女がどんな要人でも、一方的に蛍介を落札しておいてこの暴力はないだろう。
教師を呼ぶより警察を呼んだ方が早いかもしれない、そう思ってポケットを探っていると「やめておけ」と男が俺に声を掛けた。
「二人とも、なかなかいい目をしている。俺が鈍ったのか?いや…それはない」
蛍介は掠めた肩を手で押さえたまま男の言葉に聞き入っていた。
「パワーもあるし動きも軽い…構えからして格闘技をしていたわけではなさそうだが…。お前、素質あるぞ。そっちの男は強くはないが、目がいいな。鍛えれば少しは伸びる」
バスコと似たようなことを口にした男は、確かに攻撃的な敵対心というものはそこまで感じられなかったが、やはり美女のボディーガードが仕事のようで、「譲さん!監視しろとは言われたけど何もそこまでしなくても…!」と制止に入る彼女の提案をあっさりと却下し、「俺が受けた命令はお前に指一本触れられないようにすることだ」と俺たちに向き直った。
監視だの潰すだの、蛍介に何が起こっているのか解らないが大人として子どものことは守らないといけない。殴られたらめちゃくちゃ痛そうだけど。
「蛍介、後ろに下がってて」
「A…!」
「強くない方がやっても無駄だろう。お前は明里に触れようとしてないんだから、見逃してやってもいいぞ」
「…こんなイケメンに傷をつけちゃ女の子が悲しむでしょ」
「面白い。どこまで避けられるかやってみろ」
「…譲さん…!」
蛍介を庇って前に出た俺を心配そうに見守る美男美女。
すぐそこに危機が迫っているというのに映画のようなシーンにどこか他人事のような気持ちになってしまう。
男――譲が構えを取り、俺への距離を一歩詰めた。
「おい眼鏡」
不意に響いた、俺たちのものではない声に譲が振り返った。
「お前、何してんだ?」
右手に牛乳を二本。
左手にはストローが刺さった牛乳を一本。
「バスコ!」
遅れてきたヒーローの如く現れたのは、建築学科のバスコだった。
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はす(プロフ) - 外見至上主義好きで検索したらこんなにも面白いのが見つかるとは思いませんでした!!最高です、腐ってるので尚更好きです、ありがとうございます!!! (2020年3月29日 14時) (レス) id: ea36bea7ab (このIDを非表示/違反報告)
レイ - めっちゃ好みです!更新待ってます! (2019年4月24日 2時) (レス) id: 3b97929db8 (このIDを非表示/違反報告)
月弥(プロフ) - とても面白いです!!外見至上主義大好きなんです!!ちなみに腐ってるので最高です!! (2017年12月10日 11時) (レス) id: d5d31cb4b5 (このIDを非表示/違反報告)
ニルヴァーナ(プロフ) - ついたままでしたね。ご指摘ありがとうございます! (2017年8月23日 10時) (レス) id: ad95aab6ae (このIDを非表示/違反報告)
みく@企画垢(プロフ) - オリジナルフラグを外してくださいね (2017年8月23日 9時) (レス) id: e89ce37d74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涅槃 | 作成日時:2017年8月16日 16時