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「あ…あの、ありがとうございました」
先に口火を切ったのは蛍介だった。
その礼は50万という大金で競り落とされたことに対するものだろうか。
彼に負けじと整った顔立ちをした美女は表情を崩さず腕組みをしたまま蛍介をじっと見つめている。
照れくさそうにはにかむ彼に、ポケットに手を突っ込んだ連れの男がぴくりと一瞬眉を寄せたような気がした。
「危うくもう一人のお姉さんに買われちゃうところでしたよ」
「…はあ？あの人がなんだっていうの？あんた何様のつもり？」
あはは、と後頭部をかく蛍介に、今度は露骨に美女が嫌そうに溜息をつく。
今までもクールな態度ではあったが、蛍介の言葉が怒りに火をつけたようだ。
確かに少し無神経ではあったか。
「何か勘違いしてるみたいだけど、好きで落札したわけじゃないから」
続けざまに発せられた言葉に俺は首を傾げた。
落札が目当てではないのに50万も出した？
セレブの考えることはよくわからない。
「一体どうしてこんな男の監視なんか頼まれるんだか…。自分がちょっと恵まれてるからって人を見下すんじゃないわよ」
「…監視？」
今度は俺が眉を寄せる番だった。
おろおろするばかりの蛍介は、正論にショックを受けたようで口を噤んでしまう。
監視。監視とはなんのことだろうか。穏やかではない単語に顔をあげると、連れの男と視線がぶつかり合う。
＜ヨケイナ センサクハ スルナ＞
眼鏡越しに薄っすらと見える鋭い目つきが俺に警告を送っているような気がした。
「帰るわよ」
「あ、あの…！」
「そこまで」
慌てて美女を追いかけようと手を伸ばした蛍介の手首を、素早く位置を変えた連れの男がぎっちりと掴んでいる。俺はそこでようやくこの男がSPの役割をしているのだと気が付いた。
「誰触ろうとしてんの？」
「放してください！」
「！」
「…蛍介！」
「テメー…」
ば、と蛍介が男の手を振り払う。
男は手を振り払われたことに一瞬驚いたようだったが、すぐに蛍介に向かって素早く蹴りを入れてきた。
「危ない！」
俺はガードをしようと両手を前に出した蛍介の肩を後ろから反射的に掴んでいた。
そのまま自分の方へぐっと引き寄せたが、しかし。
「！？」
「…！」
男の足の軌道が変わり、蛍介の肩をよく手入れされた靴の先が掠めた。
衝撃を受けた俺たちは思い切り地面へ尻もちをついてしまう。
正直、あの蹴りをまともに食らうよりはマシだろうが、今のも相当痛かったはずだ。
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はす(プロフ) - 外見至上主義好きで検索したらこんなにも面白いのが見つかるとは思いませんでした！！最高です、腐ってるので尚更好きです、ありがとうございます！！！ (2020年3月29日 14時) (
レス) id: ea36bea7ab (このIDを非表示/違反報告)
レイ - めっちゃ好みです！更新待ってます！ (2019年4月24日 2時) (レス) id: 3b97929db8 (このIDを非表示/違反報告)
月弥(プロフ) - とても面白いです！！外見至上主義大好きなんです！！ちなみに腐ってるので最高です！！ (2017年12月10日 11時) (レス) id: d5d31cb4b5 (このIDを非表示/違反報告)
ニルヴァーナ(プロフ) - ついたままでしたね。ご指摘ありがとうございます！ (2017年8月23日 10時) (レス) id: ad95aab6ae (このIDを非表示/違反報告)
みく@企画垢(プロフ) - オリジナルフラグを外してくださいね (2017年8月23日 9時) (レス) id: e89ce37d74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：涅槃 | 作成日時：2017年8月16日 16時
