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「さがしものがなんなのかもわからない。

兄なのかもしれない。…違うかもしれない。」



指先に血が巡らない感覚があった。無意識に手が震えている。


ごめんなさい、とやっとのことで声を出した。自分でも驚くほど細い声だった。



その瞬間、彼の大きな手が私の手を握った。

びっくりして彼を見る。

彼はかすり傷のできた頬を少し赤らめている。でも、目は遠くを見据えて動かない。



「太一は母親がいないでしょ?、俺はたまたま家事ができたから、あの家でも家事をやってる。

それが普通、母親がやることだから、彼の母親の代わりになれてるんじゃないかって気づいたのは最近なんだ。

真魚だってそう。アイツが辛いなら助けるし、彼女のために生きるって思えば、それは彼女の家族とおんなじこと。」



「前に言ったじゃないか。人は誰かの代わりに生きてる。代わりが生き甲斐の人もいる。」



彼が私と目を合わせた。覇気のある瞳。つらいくらい美しくて、強い。


「なおさんがお兄さんの事を忘れてしまうのなら、俺が思い出すきっかけになるよ。お兄さんが待っても戻ってこないなら、俺は喜んで君の支えになる。

代わりだからお兄さんにはなれないけど…一緒にいることはできるだろ?」



ぎゅ、と握る手の強さが増す。

さっきまであんなに冷たかったはずの手が、こんなにもあたたかい。

それが彼のぬくもりだと感じたとき、私の目から大粒の涙が流れる。


「…ありがとうございます。こんなこと、話せるの、翔一さんだけです。ほんとに…嬉しい」


そういうと、彼はいつもよりちょっと深い微笑みを浮かべた。


海風が、彼の長い髪の毛を揺らした。
綺麗だった。目を奪われた。


「あの、なおさん。ちょっとついてきてもらえますか。」


「ええ、もちろん」


そういうと、彼はまた少年のようなイタズラっぽい表情を見せた。


ベンチから立ち上がった。繋いだ手はまだかたく結ばれていて、頬に熱が集まる。



彼に引かれて歩き出す。

人なんているはずないのに、カップルみたいだろうかなんて考えている私は、相当彼にぞっこんらしい。


海は、うつりゆくはずの景色が変わらない。ずっと海だ。

だから、翔一さんとずっと長いこと一緒にいるようで、嬉しい。


彼が止まった。私も止まる。


身に染みる寒さも忘れて、それに一瞬で目を奪われる。

「…これが、俺がなおさんをここに呼んだ理由です」

海の鏡に映る、工業地帯の光と煙突の煙が、一面に広がっていた。

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そーちゃん - アギトにハマり、これを一気見しちゃいました!泣けるところもあれば、笑えるところもあったので、すごくいい作品だと思いました!頑張ってください! (2021年8月26日 0時) (レス) id: cf2ff24390 (このIDを非表示/違反報告)
カヲル - 今一気に読み終わりました。泣きましたよー!!連投失礼します。一日で書いたとか信じられない速筆ですね!!!続きと、よろしかったら北條さんの夢小説を・・・(くどい(笑)) 素敵さなく貧有難うございますvvvv、 (2019年10月8日 16時) (レス) id: 307ac8236c (このIDを非表示/違反報告)
カヲル - 長くなり一通に入りきりませんでしたので続きです(汗) 翔一君も好きですが 北條さんも大好きなので 北條さんのもかいていただけましたら物凄く嬉しいです (2019年10月8日 16時) (レス) id: 307ac8236c (このIDを非表示/違反報告)
カヲル - アギトを最近見てはまりました。私は文才がなく、人様が書いてくださったものを楽しませて頂くよりない人間ですが、夢小説が大好きなのに、20年近くも前の 人気作品のはずの仮面ライダーアギトの夢小説が全くみつからなくて困っておりました。有難うございます。 (2019年10月8日 16時) (レス) id: 307ac8236c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひのもと | 作成日時:2019年5月5日 12時

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