愛想笑いは自然に起こる ページ5
「先輩、私こっちなんで。さようなら」
「僕もこっちなんで…。」
2人で帰る道を行く。
「…え、えっと」
話す話題、というのがうまく切り出せずに数メートル歩いた。
彼もしばらくは無言で返す。
どうしようもなく困っていると、彼は重い話題を切り出してきた。
「Aって頭良いし、色んな楽器弾けて流石だよ」
他にとって、他愛ない"軽い"話と思っていても、これは私が一番聞きたくない"重い"話だった。
「翡翠くんだって頭良いじゃん」
苦しい。それでも愛想笑いをする。
翡翠 奏(ヒスイ ソウ)くん。
彼は部活で知り合った同級生だった。
「そういや今日の国語、「卒業ホームラン」の。どうだった?
俺、思うんだ。
努力は必ず報われる。
努力すれば人は何でもできる。
まあ、ある程度正解だよなって。
勉強だって、実技だって、何だってやろうと思って頑張ればできるんだからさ。」
確かにそうだと思う。
何だってやりたくないもの嫌々やっても伸びないし。
「やりたいことやってて認められなくなるのは、やっぱり辛いよ。」
「あ…
なんか、ごめん」
「良いの良いの。」
また、愛想笑い。
剥がれ落ちないこの表情。癖になってる…?
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作者名:光希 | 作成日時:2021年4月14日 16時